劇場公開日 2022年12月9日

「この映画の欠点と存在価値」ラーゲリより愛を込めて 夏子さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0この映画の欠点と存在価値

2022年12月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

私は泣けませんでした。多分、この時代のことを知りすぎているからだと思います。私、79歳。3歳の時に満州から引き揚げてきました。父は関東軍の軍人で、終戦後はシベリア抑留され、3年で帰国しました。

映画の話に戻れば、過酷な映像、見栄えがする映像を見せるためだけとしか感じられない場面が何か所かあって白けました。特に、ラーゲリに入ってからの戦闘はありえません。捕虜になった人達は完全武装解除されていますし、ソ連もラーゲリを攻撃する必要はありません。映画の中でもストリー性がありませんでしたし、この辺りから、私の気分は白け気味。

抑留者たちが先に帰国した人達と、11年も残された人達に別れましたよね。その理由が何も描かれていません。私は、あれは、赤思想教育に合格した人と、不合格になった人の選別だと思います。それが全く描かれていません。要するに、要領よく共産主義思想に転向したフリが出来た人と、それが出来なかった生真面目な人達との選別です。私の父はフリをしていたと言っていました。8割がフリをしていた、と言っていました。抑留させたソ連側の目的は、シベリア鉄道敷設の労働力と日本の共産主義化です。抑留者たちの共産主義化の苦悩が何も描かれていません。ロシア語ができた人は、共産主義化のフリができたとか、できなかったとかに関係なく、スパイ扱いされて過酷な扱いになったことは本当のようです。

犬の話はフィクションと感ずる方も多いようですが、犬の話は実話です。船を追いかけて氷海を渡ってきたのも事実です。ネットで「シベリア 抑留者 クロ」などで検索すると、今も、この話が出てきます。新聞社が写した「クロ救出」の写真も掲載されています。クロはみんなと一緒に舞鶴まできて、舞鶴で誰かに引き取られて平和に暮らしたようです。

私には「白け気味」の映画でしたが、「シベリア抑留」という言葉も、「満州引き揚げ」という言葉も知らない今の人達にも、シベリア抑留の理不尽さ、過酷さを気付かせたくれた意味で、この映画は存在価値があり、使命を果たしたと思います。

あと、満州引き揚げの身としては、シベリア抑留の前に満州の悲惨さがあります。色々な話がありますが、これも映画化されて、満州の悲惨さを今の人達に知ってもらいたいです。最近、読んだ本で「満州 奇跡の脱出」には感動しました。これは、2018年に内野聖陽主演で「どこにもない国」としてNHKでテレビ・ドラマとして放送されましたが、映画になってほしいと思います。

夏子
夏子さんのコメント
2024年10月18日

マサシ様

ご丁寧な返信をありがとうございました。
引き揚げ者と言われても、私、なんでもありません。小さすぎて何も覚えていません。両親は、そうでもなかったようですが。

我が家も、引き揚げでは相当な苦労をしています。父がソ連に強制連行された後、母は、一人で、難民生活をしながら4人目の子供を出産し、終戦翌年、ゼロ歳児から7歳児までの幼子4人を連れて引き揚げてきました。全員が生還しました。色々な好条件に恵まれたおかげだと思っています。帰国後の貧乏生活はひどいものでした。でも、4人の子供たち、一応、一人前の教育を受けさせてもらい、あの両親の人生は、子育てに必死の人生だったと思います。

満州の出来事、なぜ日本が満州まで進出して行ったのか、シベリア抑留のことなど、興味本位で色々な本や手記を読むと、日本の近現代史の色々なことが分かってきて面白いですよ。

夏子
マサシさんのコメント
2024年10月15日

貴重なお話聞かせて頂きありがとうございます。引き上げの当事者(そんな言い方して申し訳ございません)の方にとっては、僕の推測はご心労になろうかと思います。大変に申し訳ございません。
但し、僕はそれでも一方的にソ連だけを悪者にしたくないのです。なぜなら、国策で中国東北地方に傀儡政権を作ったわけですから。その責任者はどうなったのか?と疑問に思います。勿論、天皇陛下の責任とは少しも思ってません。

マサシ
夏子さんのコメント
2023年2月10日

ころんさん

久しぶりに戻って自分の書き込みを見ましたら、ころんさんのコメントがありました。ありがとうございます。色々な場面で共通の感覚をもっているようです。

私、今頃になって、何かと満州関係の本を読んだり、父が残した満州友の会やシベリア抑留友の会の会報などに書かれている手記を読んだりしているのですが、なかなか興味深いです。軍人さんが書いたものは、一般人が書いたものとは一味違う、「ホーッ」と感ずるものがあります。

この映画を記念してでしょうか、2月22日~3月5日に、東京で「ラーゲリからのメッセージ・シベリア抑留の記憶をつなぐ」という展示会があります。場所は、丸の内「KITTE 地下1階、東京シティ・パフォーマンスゾーン」となっています。舞鶴引揚記念館と東京新宿の平和祈念展示資料館の共催です。私、ちょっとシンドイですが、行ってみようと思っています。

夏子
ころんさんのコメント
2023年2月8日

クロちゃんの話、フィクションだねと旦那と言っていたのですが、事実だったのですね!。

私もこの映画では泣けませんでした。
昔みたく、夏は地上波で当時の戦地映像を放送してほしいです、昭和は終戦記念日に実写で残酷な映像を流していましたよね。

ころん
夏子さんのコメント
2022年12月16日

ke_yo さん

ご質問への返信です。
ところで、本来のレビュー投稿とは違う場所のコメントと返信になりますが、このままでいいですか?

「シベリア抑留は戦後起きたこと」と理解されているなら問題ありません。そのことを指摘したかっただけです。「・・・戦争をしている国にいて、いつ空襲受けるか分からないでいるより過酷な収容所の生活…」という記述を日本国内の空襲とシベリア抑留が同時進行していると理解されているのだと誤解してしまいました。大変失礼しました。お詫びします。

夏子
ke_yoさんのコメント
2022年12月16日

夏子さん

コメントありがとうございました。
気になった点というのは何でしょう。
戦後の話だというのは理解しています。
しかし実体験や知っている方が見たら、色々白けたり複雑にもなる難しいことを題材にしている作品ですよね。

ke_yo
夏子さんのコメント
2022年12月14日

みかずきさん

コメントありがとうございます。新聞社が写した「クロ救出」の写真には感動します。クロの必死さと、縄梯子でクロのところまで降りてきて手を差し出している船員の手のやさしさ。なんとも感動する写真です、どうぞご覧あれ。

夏子
みかずきさんのコメント
2022年12月14日

はじめまして、夏子さん
みかずきです

クロが氷海を泳ぐのは、実話だったのですね。
本作では、
日本軍捕虜達とクロの心温まる交流・絆シーンが数回描かれているので、
実話だとしても納得です。

-以上-

みかずき