劇場公開日 2022年12月9日

「戦争が招いた悲劇の伝承」ラーゲリより愛を込めて コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5戦争が招いた悲劇の伝承

2022年12月13日
PCから投稿

私が泣いたポイントは、犬のクロ(大吉くん)が走るシーン。
名優だったわ。

原作は読んでいないのですが、私は昔に観たドラマ版や、シベリア抑留に関してちょっと読んだ資料で、たまたまモデルの方がどうなったか知ってたため、感動はやや薄くなってもったいなかったかも。

戦争が招いた悲劇を、折に触れ映画などにするのは良いことだと思います。
シベリア抑留はソビエトによる国際法違反、ポツダム宣言の無視、今も対ウクライナでロシアが見せるのと同じ詭弁の数々で、捕虜にした元日本兵を奴隷的強制労働へと追いやった非人道的な歴史です。
ドイツのアウシュビッツと同じく、語り継ぐべき戦争犯罪であり、このウクライナ侵略戦争が起きている時期に、旧ソ連・現ロシアの本質が見えてくる事件でもあります(と同時に日本のダメな体質も)。

ただ、現実にはもっと悲惨で、残酷だったようです。
帰国できずに亡くなった人数があまりに多かった。
ソ連政府は日本政府による安否確認や、抑留者たちの帰国意向の調査を妨害しました。
また日本も視察団を送り込みながらも、国交回復を優先してソ連側と揉めるのを回避し、無実で戦犯とされている窮状を訴える抑留者から託された手紙を握り潰し、「戦犯は快適な環境で厚遇されている」などと虚偽の報告を行ったりしました。
日ソ国交回復で生き延びた人々の多くは帰国できたものの、ソ連はもちろん日本政府もろくな補償もせず、抑留時の賃金未払い問題まで発展しました。
帰ってきても、肉体のダメージとPTSDでまともに動けず、社会復帰には相当な時間を要しました。
こういった事実には、映画で触れていませんでした。
だから、遺書の最初の一通が届いた1957年から、最後の一通が届く1987年まで30年かかったことなどは描かれていなかったわけで。

事実を基にした物語(フィクション)ではあるものの、「感動させます」「お涙頂戴」要素が大きすぎて、物事を矮小化してないかが気にかかってしまいました。
一方では、映画は映画と割り切り、これを機に実際は何があったかを知るきっかけになればいいなとも思いました。

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コージィ日本犬