劇場公開日 2022年12月9日

「ラーゲリよりの愛を受け取って」ラーゲリより愛を込めて おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ラーゲリよりの愛を受け取って

2022年12月11日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

戦後のシベリア抑留を描いた本作。重い内容ですが、ただひたすらに家族を想う一人の日本人の愛と希望の物語として、戦争やシベリア抑留の知識皆無でも全く問題なく、観る者の心に強く響きます。

ストーリーは、第二次世界大戦後、シベリアに抑留され、強制収容所(ラーゲリ)の過酷な環境下で重労働を強いられていた日本人捕虜たちの中、愛する家族の待つ日本に必ず帰ると、希望を捨てずに信念を貫く山本幡男の姿が、諦めかけていた仲間たちの希望の支えとなっていくというもの。

実在の日本人捕虜・山本幡男を元にした作品ということですが、彼の生きざまがただただすばらしかったです。どんな逆境にあっても決して希望を失わず、笑顔を絶やすことなく前向きに生きる彼の姿が、観る者の感動を誘います。それは、収容所にいた山本の仲間たちにとっても同じです。必ず生きて帰って愛する家族に会うという希望、それを決して諦めないという強い意志、いつでも穏やかに仲間に接する彼の姿が、周囲に笑顔をもたらし、生きる支えとなり、シベリアの大地で凍てついた仲間の心を緩やかに溶かしていきます。仲間たちにとって山本の存在は、いつしか生きる希望そのものになっていったのだと思います。

そんな彼らが、病気に倒れた山本にきちんと診察を受けさせようとソ連軍に直訴するあたりから、涙が止まりませんでした。単に山本のための行動というだけでなく、卑怯者と自らを責める松田、戦争で人の心をなくした相沢、兵士でもないのに囚われた新谷、保身のために仲間を売った原たちの変容を絡め、重層的に描き出します。山本のまいた希望の種が、仲間たちの心で芽吹き、大きな力となったことが伝わる印象的なシーンでした。

それが、さらに引き揚げ後のシーンに収束する展開に激しく心揺さぶられ、嗚咽しそうになりました。四人の仲間たちがそれぞれに山本の言葉を家族に届ける姿、それを受け取る家族の姿は、今思い返してもまた泣けそうです。この「愛」と「希望」のバトンリレーは、山本から仲間へ、仲間から家族へ、家族から次代の家族へ、そして本作から観客へと、確実に引き継がれたように思います。私もラーゲリよりの愛を確かに受け取りました。

主演は二宮和也くんで、穏やかながら芯の通った山本幡男を好演しています。妻・モジミ役は北川景子さんで、戦後の混乱期でさえ困窮した様子のない美しさに神々しさを感じるほどでしたが、夫の帰りを待つ姿、その訃報に慟哭する姿が胸を打ちます。脇を固める、松坂桃李くん、桐谷健太さん、中島健人くん、安田顕さんらも渾身の演技で盛り立てます。

おじゃる