「夏は短し誘えよ青年」四畳半タイムマシンブルース 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
夏は短し誘えよ青年
『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』の森見登美彦の小説をTVアニメ化した『四畳半神話大系』。
映画化もされた劇団“ヨーロッパ企画”の舞台『サマータイムマシン・ブルース』。
この2つが奇跡の…いや、禁断のコラボ!?
『サマータイムマシン・ブルース』は昔見た事あり。大学生たちがタイムマシンに乗って壊れる前のエアコンのリモコンを取りに昨日へタイムトラベルする…というおバカな設定ながら巧みな伏線や展開が見事なSF青春コメディであった。
『四畳半神話大系』は未見。が、作風もキャラデザインも『夜は短し歩けよ乙女』まんまなので、この独特の世界観は抵抗なく受け入れられた。見ていく内にクセになっていく。
全く別の作品なのに、これが驚くくらい何の違和感もなく合わさっている。タイトルもズバリ。
森見世界にあのタイムマシンがやって来たような、あのタイムマシンは森見キャラを乗せる日を待っていたような…。
開幕20分くらいは初見の人の為にこの世界観やキャラの紹介。
廃墟寸前の“下鴨幽水荘”に集う一癖も二癖も三癖もありすぎの面々。“一刻荘”なんて比じゃない…?
主人公“私”の悶々憂鬱さも分かる。“私”の一人称で語られる。この言い回しが落語を聞いているようで面白い。
そんな彼らの前に現れた、誰がどう見たって“アレ”。
実動したら、どうやら本物。
定番の未来へ恐竜時代へ行こうと議論になる中、安全パイとして“昨日”へ。壊れる前のエアコンのリモコンを取りに行こうとするのだが…。
過去を変えたら宇宙滅亡の危機…!
たかがリモコン一つで…? 『ザ・フラッシュ』だってトマト缶一つで全マルチバース滅亡の危機。
小スケールなのに大宇宙の大ピンチ…!
このおバカさ緩さが最高。
メインストーリーは『サマータイムマシン・ブルース』まんまなのだが、それでも大変面白く見れる。
自主映画撮影中に映った“もう一人”の小津。
噛み合わない会話。
銭湯の3人の客。
消えた樋口氏のヴィダルサスーン。
誰…? 謎の田村くん。
河童の石像は何故あの人そっくり…?(←ここ、一番笑った)
そもそもリモコンは“何処から”やって来た…?
明石さんを誘った馬骨野郎とは…?
“私”は一体どうやって…?
これら伏線と回収も巧み。分かった上でまた見てもまた違った面白さがある。
昨今のアニメのような実写みたいなリアル映像ではないが、夏の京都の雰囲気が風情感じさせ、ノスタルジーくすぐる。
ドタバタだけど、しっかり思い出深い青春してる。
明石さんに淡い想い抱く“私”。だけど不甲斐ない…。
ところが最後も最後に。明石さんを誘った馬骨野郎は実は…。初めて明石さんと話した時彼女が持っていたゆるキャラアクセサリー。“彼”も持っていた。ひょっとしたら“父親”は…そう想像してしまう。
成就を予感させ、実はラブストーリーとしても素敵。
いや~面白かった!
困ったのはレビュータイトル。
“時をかけるリモコン”にしようと思ってたんだけど、明石さんに先に言われてしまったので、このタイトルにしました。