「めちゃくちゃ出来の良い二次創作って感じ」四畳半タイムマシンブルース といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
めちゃくちゃ出来の良い二次創作って感じ
これまで観てきたアニメの中で一番好きな作品を聞かれれば、迷わず『四畳半神話大系』と答えるくらい、本作の元となった『四畳半神話大系』は私にとって特別な作品です。森見登美彦先生の原作と湯浅政明監督の独創的な映像の絶妙なマリアージュが魅力的で、これまで数多くの映画やアニメに触れてきた私が、自信を持って人に勧められる名作だと思っています。
しかしながら本作『四畳半タイムマシンブルース』は、四畳半神話大系のキャラクター達を主軸にしつつも、ヨーロッパ企画の名作演劇『サマータイムマシンブルース』のストーリーラインをなぞるという異色の作品です。そのため原案がヨーロッパ企画の上田誠さんですし、本作の監督は湯浅監督ではなく夏目真悟監督です。森見登美彦先生や湯浅政明監督は関りが薄く、私が好きな雰囲気が薄れてしまっているんじゃないかと心配になりながら、Disney+にて鑑賞いたしました。
四畳半神話大系はアニメ・原作小説ともに鑑賞済み。
サマータイムマシンブルースは映画も演劇も未鑑賞です。
結論ですが、事前の心配は完全に杞憂でしたね。
四畳半っぽさはしっかり残しつつ、しっかり面白い作品になっているように感じました。キャラクター同士の軽妙な語り口や独特の空気感が魅力的で、過去・現在・未来を行き来する展開は非常に面白かったと思います。
後半の伏線回収が若干強引に感じてしまってそこが唯一の不満点でした。
ヨーロッパ企画さんの伏線回収はやはり演劇向きなんでしょうか。映像作品で見るとイマイチ驚きが無いし、伏線回収のスッキリ感が薄いように感じます。「見事な伏線回収」「誰もが騙されるどんでん返し」みたいなのを期待して観ると肩透かし食らうかもしれないですね。
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京都府左京区にある下鴨幽水荘というボロ下宿に住む私(浅沼晋太郎)。その中で唯一エアコンが設置されている部屋に引っ越しすることができ、快適な夏を送っていたが、悪友の小津(吉野裕行)がエアコンのリモコンにコーラをこぼして故障させてしまい、エアコンが使えなくなってしまった。翌日、暑さに苦しむ下宿の住人たちの元に、25年後の下鴨幽水荘の住人と名乗る田村(本多力)が現れる。住人たちは、彼が乗ってきたタイムマシンを使って、エアコンのリモコンが壊れる前に回収できないだろうかと画策する。
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私はDisney+で先行配信されている本作を鑑賞しました。90分の映画ですが、Disney+では5話に分割されて順次配信されるという形式でしたので、映画館で鑑賞した方とはもしかしたら作品の印象が異なっているかもしれません。実際、本作を劇場で鑑賞した某映画レビュアーさんは、「映画館で一気に観た方が良い」というオススメをされていました。
本作の世間的評価が知りたくてYouTubeの映画レビューを見てみると、大絶賛されている方が多いです。中には「今年一番」とおっしゃる方もちらほらいらっしゃいます。どの映画レビューサイトでも軒並み高評価で、このレビューを書いている時点で映画ドットコムでの評価は☆4.1とかなり高いです。
一方の私は、もちろん本作は楽しめましたが、周りの方ほど熱量を持つことができなかったというのが正直なところでしょうか。これは四畳半神話大系のファンだからなのか、単純に自分の好みに合わなかっただけなのか、Disney+という媒体で鑑賞してしまったからなのかは分かりませんが、「確かに面白かったけどそこまでだろうか」という感じです。
単純に、劇団ヨーロッパ企画の伏線回収劇が苦手なだけかもしれません。
これを「見事な伏線回収」と言いたくない自分がいます。「伏線とは元々機能していた設定が後から別の機能を持つこと」「最初から違和感として挿入される設定に後から実はこうでしたとネタバラしするのは伏線じゃなくて説明の後付け」とは、ライムスター宇多丸さんがよく仰っていることですが、本作で「伏線回収」として登場する設定の全てが、違和感を解消するための後付けにしかなっていないように感じます。
細かい不満点はありますが、全体的に見れば非常に楽しむことができました。間もなく上映も終わってしまいますが、Disney+ではオマケのアニメも観ることができますので、オススメです。