劇場公開日 2022年9月30日

「この世界観がクセになる!」四畳半タイムマシンブルース おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5この世界観がクセになる!

2022年10月2日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

難しい

その独特の世界観がクセになるテレビアニメ「四畳半神話大系」。言うまでもなく私も瞬く間にその魅力の虜となり、バラ色のキャンパスライフを夢見る「私」と個性豊かな仲間たちが繰り広げるドタバタ劇を毎週楽しみにしていたものである。本作はその劇場版ということで、期待に胸高鳴らせてさっそく鑑賞してきた。(いつもとレビューの文体が異なるのは、多分に本作の影響を受けたためであることはお察しのとおりであり、以降は浅沼晋太郎さんの声で脳内再生していただければ幸いである。)

ストーリーは、「私」が下宿する下鴨幽水荘の唯一のエアコンのリモコンが壊れたことに端を発し、「私」と仲間たちがたまたま見つけたタイムマシンで過去から故障前のリモコンを取り戻すというもの。この狭く古びた下鴨幽水荘を舞台にし、リモコン奪取というしょうもない理由でタイムマシンを駆り、100年以上の時を越える壮大な物語を描くという、まさに「四畳半」の真髄のような珠玉の作品と言っても過言ではない。

おもしろい!開始10秒で広がる四畳半ワールドに、懐かしさとともに妙な心地よさを覚えたのは私だけではないはずだ。テレビアニメの主要キャラはそのままに、各キャラにしっかりと役割と見せ場を与えていきいきと描き、ストーリーにもがっつり絡めているとあれば、文句のつけようもない。愛すべき悪魔キャラの小津をまさか大スクリーンで観る日が来ようとは夢にも思わなかった。

一方で、劇場版の尺を生かした数々の伏線とその回収も見事であり、その緻密に練り上げられた脚本のすばらしさは筆舌に尽くし難く、これはもう実際に貴君の目で確かめてもらうほかないだろう。足早に駆け抜ける展開が目まぐるしい場面転換を生み出し、「私」を始めとした主要キャラが勝手気ままな別行動を取るため、話はさらにややこしくなり混迷を深めていく。しかし、それを「私」の語りによって補足しながら怒涛のごとく突き進む展開に、観客の誰もが疑問やツッコミを挟む余地はなく、物語の成り行きに身を委ねるほかない。

そんな複雑さをもちながら、序盤で起きたチグハグな会話や行動、カッパの銅像、明石さんの気になる相手、見知らぬ学生の田村、モチグマン等の数々の伏線を回収する終盤の収束には、もはや心地よさしか感じない。ラストの明石さんのセリフも感慨深く、「私」の求めるバラ色のキャンパスライフは、実はもう手の届くところにあったのである。まさに「好機はいつも目の前にぶら下がっている」のである。

いつもの面々のドタバタを描きながら、終わってみれば、目の前にあるものを掴んで自身の手で未来を切り拓けというメッセージが心に響く本作。頭から尻尾の先まであんこの詰まった鯛焼きの如く、ラストまで濃密な満足感を得られること請け合いである。

主演の浅沼晋太郎さんはじめ、坂本真綾さん、吉野裕行さん、中井和哉さん、諏訪部順一さん、甲斐田裕子さんら、テレビアニメキャストに一分の隙もない。本作ではキーマンとなる田村も、聴いた瞬間に本多力さんだとわかるものの、このイメージとキャラのマッチングならば、キャスティングにいささかの異論も生じまい。

この世界観に魅了された御仁が多いと見え、私が足繁く通う田舎の映画館も稀に見る盛況ぶりであった。とはいえ、初見で本作の真の楽しさは味わうことは難しいだろう。せめて事前にテレビアニメの数話も視聴して、下鴨幽水荘の人物相関ぐらいは押さえておきたいものである。

おじゃる
おじゃるさんのコメント
2023年1月26日

美紅さん、共感&コメントありがとうございます。また、他作品のレビューにもたくさんの共感をいただき、ありがとうございます。本作のレビューを上げておられないようなので、こちらに返信いたします。

鑑賞作品のすべてにレビューしていくのは、頭も時間も使うので大変ですよね。自分は、思いがうまくまとまらない上に文才もないので、言葉につまっていつもすごく時間がかかってしまいます。でも、基本的に“ぼっち鑑賞”の自分は、こうしてみなさんと感想交流できるのが楽しみで、拙いレビューを上げています。これからもどうぞよろしくお願いします。

おじゃる
2023年1月26日

確かに個性豊かなキャラクターでしたね。
未来は「未来は自分で切り拓いていくもの亅なんてタイムリープありきの台詞でした。私は観た映画があっても1本、1本レビュー出来ていないのですがどうぞよろしくお願いします★

美紅
2023年1月26日

初めて映画を観る前に席を予約してからの観賞となった映画です。新宿の映画館で観たのですがとても思い出深い作品となりました。映画系YouTuberのお勧めの映画でもあります。

美紅
2023年1月26日

こんばんは☆おじゃる様

美紅
uzさんのコメント
2022年10月7日

コメントありがとうございます。
初めて聞く単語も多い中、ニュアンスだけでも十二分に楽しめるあの文才は異常です。笑

原作未読とのことですが、もし機会があれば一読してみてください。
元々は4章しかないため、あのクセの強い雰囲気で半分以上オリジナルだったアニメの凄さもより感じると思います。

uz
uzさんのコメント
2022年10月6日

文体が寄ってしまう感覚、非常によく分かります。
初期の森見作品を読み終えたあとは、必ずと言っていいほど脳内の独り言がアレになってました。笑
ただ、単語や言い回しのチョイスがどうしても追いつけないんですけどね。

uz
満塁本塁打さんのコメント
2022年10月2日

\( ˆoˆ )/返信ありがとうございました。「ラジャー🫡!」承知いたしました。気に入ってグッズの「メモ帳&マグネット」購入してしまいました。配信関係で観させて頂きます。今後もよろしくお願いいたします🙇‍♂️。「ガッチャマン」ネタご存じなかったら唐突でごめんなさい。ありがとうございました😭。

満塁本塁打
おじゃるさんのコメント
2022年10月2日

ゆうさん、共感&コメントありがとうございます。
そちらにコメントできなかったので、ここに返信させてもらいます。
おっしゃる通り「早口の私と悪魔な小津との攻防が楽しい」ですよね!おかげでついついこんなレビューになってしまったのですが、お気に召していただけたなら嬉しいです!

おじゃる
満塁本塁打さんのコメント
2022年10月2日

イイねありがとうございました。初見は「理屈を理解するのは困難は」おっしゃるとおりですね。ただ雰囲気だけなら楽しめました。「語り」に無防備で少し眠った😪ので、ど共感です。\( ˆoˆ )/\( ˆoˆ )/\( ˆoˆ )/

満塁本塁打
ゆうさんのコメント
2022年10月2日

「私」の語り風レビューナイスです!

ゆう
a7aさんのコメント
2022年10月2日

TV作品のファンならこの感想になりますよね。ファンが見たかった四畳半の新作はこれだ!と声を大にして言えます。四畳半好きなファンはすぐに観に行けと。(笑)
TV版を見る機会がなかった人も気になった人は是非見てもらいたい。新たにファンを増やせる良作だと思います。

a7a