「どんでん返しの瞬間に自己犠牲もヒロインも作品も薄っぺらくなる」消えない罪 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
どんでん返しの瞬間に自己犠牲もヒロインも作品も薄っぺらくなる
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殺人罪で20年も服役した中年女性が仮出所後に社会の厳しい目に晒されつつ、いかに新たな人生を発見していくかを描いた作品かと思ったが、全然違ったので驚くとともに、その違い方がいかにもネトフリらしく、結果的に浅薄な映画となってしまって残念な気がする。
出だしからしばらくは、刑務所暮らしの中で人間的な温かみや思慮深さを喪失したヒロインのきつい生活が描かれる。大工の技術はあるのに、前科者なので全然雇ってもらえない。やむなく魚加工工場で働き始め、そこで優しい男性とめぐり会って付き合うものの、前科者だとわかるとやはりアウト。他方、彼女に殺された保安官遺族の兄弟が彼女を付け狙う…こういう現実のザラザラした感触は嫌いじゃない。
ところが、このヒロインの年の離れた妹への執着が尋常ではなく、話は彼女の再生というより、妹との再会が出来るかどうかに流れていくと、やや鼻白んでしまう。そりゃあ、会いたいのはわかるけどね。妹はもう優しい養父母の下で幸せに暮らしているんだし、別々に暮らすしかないじゃないか、と思って見ていると、かなり強引に妹と会う算段をするし、いざ養父母と面談すると乱暴な態度で自分の要求を主張するばかりなので、ちょっと同情できないなあと感じざるを得ない。
その後、被害者遺族による勘違い誘拐を挟んで、最後に実は殺人を犯したのはヒロインではなく妹だったというどんでん返しになる。仮にそうだとしても、自分が罪を引き受けたのなら、真相は死ぬまで話すなよ…でも彼女は話してしまうので、その瞬間から自己犠牲が薄っぺらいものとなり、ヒロインが軽薄な人間となり、作品そのものも白々しくなるのである。
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