「【救済】」消えない罪 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【救済】
アメリカ社会に潜む問題を背景にした重厚な物語だと思う。
このエンディングを観た人は、どのように感じるのだろうか。
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のレビューで、「パワー・オブ・ザ ・ドッグ」が賞レースの中心にいるみたいに書いたが、この作品も、賞レースで注目されるんじゃないかと思う。
それに、サンドラ・ブロックの演技は、すごみを感じさせる。
(以下ネタバレ)
冒頭で書いたことを補足すると、基本的なアメリカの問題は、銃社会であるということだ。
だから、子供が銃を撃ってしまうといった偶発的な事故は起こるのだ。
そして、亡くなったのは保安官だ。
保安官は、警察と同様、司法に携わるが、実は選挙で選ばれる警察とは異なる存在だ。
保安官は、開拓時代から続くアメリカの司法システムの一つで、保安官になる人は、地域で尊敬を集める名士的な人物なのだ。
この部分を知らないと、この映画が単なるミステリーで、アメリカ社会の抱える問題をじっくり考えさせるような仕立てになっていると思わない人も多いかもしれない。
保安官を殺害した(と思われる)ルースへの風当たり。
残された保安官家族の気持ち。
また、この姉妹が置かれていたネグレクトの問題や、前科者が生きづらい状況は、世界的にどこでも同じだろう。
この作品は、こうしたそれぞれの問題に深く踏み込まないものの、観る側が想起しやすいように、これらを散りばめ、事実が明らかになるにつれて、ルースや、周りの人々の心の揺らぎを印象的に表現した秀作だと思う。
エンディング、ルースにキャサリンが近づき、抱擁する場面。
一言も交わすことはない。
ここからは作品を観た人の想像に委ねられている。
ルースは救済されたのだと思う。
これは、救済の物語だ。
まもなくNetflixで配信になると思うので、多くの人に観て欲しいと思う。