劇場公開日 2021年12月4日

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「クナシルの今の断片」クナシリ LSさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0クナシルの今の断片

2021年12月31日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

70余年前の日本人住民の強制退去を記憶する人を含む数人の証言と映像を中心に、国後島で今を生きるロシアの人々の姿をスケッチする。
映画は、かつて日本人が住んでいた地にロシア人が住んでいる、という事実の断片を映す。語られる内容、モデル、シーンがサンプルとして適当なのかは分からない(ロシアの他の辺境と比べてどうかとか、北海道の過疎地も同様ではという点もひとまずおく)が、画面から見えるのは、貧しく、発展から取り残され、ビジネスマンと軍人以外に自信に満ちた人が見えない人々の暮らす地である。

北海道とサハリンの例を見ても、人的往来や交易があればそれに応じた関係が形成され、それによる利益も生まれるのに対し、わずか十数キロの距離にありながら行き来が許されないことのもどかしさを感じた。
平和条約や領土交渉の帰結に関わらず、現住の人々を強制的に追い出すことは現実的ではないし、非人道的でさえあるだろう。境界の両側で暮らす人々にとって実益があり、互いに理解と信頼を積み重ねられるような交流が継続できればいいと思うのだが。

若い世代や、四島の他の島の状況も知りたく、喰い足りなさは激しいが、「問題」としてしか語られない地で今暮らしている人々に思い至ることができたことに感謝したい。

LS
LSさんのコメント
2022年1月13日

ご参考:劇中の犬ぞりならぬ「犬車」の方に取材した記事がありました。
「北方領土泳いで渡った事件でわかったこと 境界に翻弄される人々」『朝日新聞』2022年1月10日。(有料会員記事)

LS