君は行く先を知らないのレビュー・感想・評価
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イランのどこか郊外を、自動車で移動する一家。 出だしは楽しげなドラ...
イランのどこか郊外を、自動車で移動する一家。
出だしは楽しげなドライヴ的、楽しそうに歌いながらですが
徐々にワケアリに見えてきて
ドライヴの目的や行き先が徐々にわかってくる、と。
私的にも、以前にイランに訪問し、テヘランの市街地散策、サッカー観戦、景色を上空から鳥瞰、ぐらいはしましたが
(かといって、政治・体制・経済などの話は、メディア越しにバイアスがかった話題しか見えず、面と向かって聞くわけにもいかず)
この映画のような側面は、一度の観光訪問ぐらいでは知りえないもので。
深い意味のある鑑賞体験でした。
p.s. 似た場所にもし行くような機会があれば、深く考えない、その場を楽しむ観光客目線でたずねたいものです。
壮大なほのめかし
2021年。パナー・パナヒ監督。イランのある家族は車でどこかに向かっている。運転している長男の「旅」に関連しているらしいが、詳しくは説明されない。車内ではなぜか4か月前から足にギプスをつけたままの父親と、無邪気にはしゃぐ小学生くらいの次男、そして助手席で長男を心配しながら見つめ続ける母親がいる(後部トランク部分に犬がいるらしいが外に出ているとき以外は映らない)。閉塞空間で描くのはつまり家族の形だ。
長男の「旅」は秘密裏に、どこぞの組織の助力を借りなければならないらしく、まあ亡命の類なのだろうが、それは一度も明言されないままドラマは続く。明言されなくても「別離の悲しみ」のようなものは終始映画のなかを流れ続けている。目的に向かって紆余曲折がある映画ではないが、伝わってくるものは確かにある。
レンタカーまで借りて家族総出で長男のお見送りをする過程はおもに会話と歌で描かれる。移動中の車内、途中休憩の場所、組織がいるらしい村、などの場面の展開はあるが、カメラはほぼ固定していて、さほど激しくない動きをじっと撮る。人物たちはじっとこちらを(観客を)見つめる時間がながくなる。「言いたいことはわかるでしょ」と言っているような表情。ほのめかし?検閲の厳しいいイランの映画であることを無言の大声で訴えているような映画。
もう何回かは観に行きたい
話としては凄く単純で、行き詰まった生活に一抹の望みをかけて長男を異国の地へ送り出すという良くあるもの。
しかしその良くある現実問題が凄く面白く見えるのは、深刻な状況の中で失わないユーモラスと適度に挟まれるしょうもないサスペンスがあればこそだろう。
特徴的な構図や音の使い方が上手だったのも間延びしない展開に一役買っていた。
主人公たち一家は問題のある家庭ではあるが、決して愛が無いわけではない。
そして可笑しくも共感できるそれぞれの象徴的な個性がユーモアを通じて観る者によく寄り添っていた。
父親の無責任がちな放任、母親の束縛手前の愛情、長男のズレた感覚の頼り無さ、次男の鬱陶しいほどの奔放さ。
日本とイラン、国柄は全く違うはずなのに普通に一般的な日本人家族にも容易に当て嵌まる要素ばかりで、人種や国が違えど所詮人間は人間、家族は家族でしかないんだなと強く思わされた。
イランの内情知らないとわからないんじゃないかな…
親と兄の涙と次男のはしゃぎようのコントラストの差で悲しみが強調される…。それしかわからない、俺。お金のためテロ集団にでも兄が身売りしたのかと思ったけどいろいろネットを見ると違うみたい。ぜひ、内情知ってみる事をお勧め。
別れのロードムービー
国外へ行く兄を家族総出で見送るロードムービー。彼らの会話のやり取りに独特な世界観を感じる。
お父さんのバットマンの話、なかなか面白い。
ボクは世界の実情を知らない
ほぼほぼ予備知識なしで鑑賞、長男が国境を超える事を理解するまでに相当の時間を要し、隣の隣の席のオジサンは轟音のイビキをとどろかせました(ワタシも三度ほど意識が遠のきました)。
どうも展開が淡々としたロードムービー調で、国を棄てるとなるとメキシコからアメリカへとか、先日観た「裸足になって」のアルジェリアからの脱出など、ひりつくような緊迫感が伝わってこず、ラストまでそんな感じでした。
それでも、これが息子の顔を見るのが最後かもしれない、旅人となった息子は行く先で無事に過ごせるのだろうか?そして残った家族の行く末だって不透明、そういう感情はお国が違えどひしひしと伝わって来て、しんみりさせられてしまいました。
作品を通してイランの正に荒涼とした大地が映し出され、人の生きる力に圧倒されてしまいました。
ただ、末っ子の超ハイテンションっぷりはワタシには作品への没入を阻害する面倒キャラになってしまい残念でした。
次男の演技が自然で素敵
観ていて家族全員で国外に逃亡するのか?と思いながら観ていました。お兄さんだけが国外に!殆ど家族4人と喫煙シーンが多いです。イランと言う戦争に巻き込まれた国がこう言うストーリーの映画を産んでしまうのか?平和が当たり前になればまた違う映画が撮られると思います。
天才子役登場!
あえて情報を一切入れずに鑑賞。ポスタービジュアルとタイトルだけで惹かれるので。
鑑賞後。ジャファル・パナヒの長男の監督デビュー作、というだけで期待もあった。若作りだが、テーマさえも家業のようだな。少年の演技が凄すぎて目を剥く。
星空
成人したばかりの息子の運転する車でトルコとの国境の高原地帯を目指して旅をする、両親と口の減らない幼い弟と余命僅かな愛犬という家族のロードムービー。
行く先も目的も知らない超ハイテンションな弟と、4ヶ月も足にギプスをしている胡散臭い父親と、旦那に小言の多い母親と、バカ息子と呼ばれる口数の少ない長男という家族。
次男と父親に引っ張られ、明るく楽し気な雰囲気だったり、ロードバイク野郎の悪ふざけの様なシュールなコミカルさもありつつも、物憂げな長男とそこに寄り添う母親と…。
観客にも旅の目的は示されないからイラン情勢に疎いと難しいかも知れないけれど、結構早い段階からヒントが小出しにされていくので、何とか想像はつくのかなと。
イランの作品でこの題材が作れたのは結構意外だし、妙な明るさの空元気な感じがなかなか良かった。
国は違えど男の子の自立の壁は母親なんですね。
「表現の不自由」は致し方ないが、それでも、奥歯に物が挟まったような「もどかしさ」が残る
父親の足のギプスに落書きされた鍵盤で次男がピアノを演奏する冒頭のシーンから映画に引き込まれる。
地面に寝転ぶ父親と次男の周りに音楽に合わせて星が灯っていき、やがては2人が銀河の彼方に吸い込まれるという、目を奪われるような素敵なシーンもある。
イランの歌謡曲の使い方も印象的だし、狭い車内での長回しがあるかと思えば、人が豆粒ほどにしか映っていない遠景でのワンカットもあり、監督のセンスの良さを随所に感じることができる。
これがイラン映画でなかったなら、ラストで旅の目的や、その理由が明らかになり、長男と家族の別れの感動が盛り上がるのだろうが、あからさまな体制批判が許されないせいで、何もかもがうやむやなままで終わってしまうのは、如何ともし難いところか・・・
観客としては、登場人物のちょっとした台詞や表情から「事情」を察するしかなく、それが、「表現の不自由さ」を逆手に取った余白とか余韻にもなっているのだが、その一方で、説明不足に起因する消化不良や不完全燃焼といったものを感じてしまうのも事実であり、そこのところは、やはり、残念としか言いようがない。
監督は、決して体制の批判をしたかった訳ではなく、「家族の絆」を描きたかったのだろう。
それでも、その家族の関係が、どこかフワフワと浮世離れしたものに感じられるのは、旅の目的や理由が不明確であることと決して無関係ではないと思えるのである。
ひとひひとり、みんなキャラが良かった 特に次男は演技のあまりの自然...
ひとひひとり、みんなキャラが良かった
特に次男は演技のあまりの自然さに、
本当の家族を見ているみたいな気がした
すっごく遠くから写したり、カメラワークも素敵だった
日本に住んでる私だって、
キャンプで2日間待つとかってありえないでしょ、
ってわかるけど、
両親は本当に分からなかったのか、
それともただ単に信じたかったのか
それを思うと、切なかった
良作です
テーマは「別れ」ですが、意外とコミカル。次男くんのお茶目な演技が素晴らしかったです。しかし、全体を包む雰囲気や、所々に見え隠れする「悲しみ」から、不穏な事情や複雑な背景が想像できます。彼の明るさが、その対局にある悲しみを際立たせている様でした。ロードムービーなので、イランの美しい景色も沢山出て来て良かったです。
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