「今の日本に存在する見据えなければならない問題」マイスモールランド komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
今の日本に存在する見据えなければならない問題
(ネタバレですので鑑賞してから読んで下さい)
幾たびもの死者などを出している日本の入管(出入国在留管理庁、かつての入国管理局)のひどさは、もっと日本の国民にも知られる必要があります。
そして入管による強制収容の判断は、現在は入管の単独で決めることが出来ますが、その判断は刑事裁判と同じように、裁判所の公判で判断される必要があると思われます。
日本の一方的で独断的な入管の判断は、どう考えても難民であると思われる人々を難民認定することなく排除しきっていると、この国の難民認定の絶望的な割合の少なさからも個人的には思われます。
(欧米の難民認定率が約63%~25%の中で、日本の難民認定率は約0.7% ※難民支援協会より)
また真っ当に働いていると思われる外国人労働者への独善的な排除も数多く感じられます。
この映画は、そんな入管から(個人的にも現実にある不当と思える)難民認定されない家族のストーリーになっています。
しかし一方で、フィクションの映画として存在するには、テーマ主義で描いてはいけないとは思われます。
なぜならフィクションの映画では、描くのは人間であり、決してそれを利用したスローガンプロパガンダになってはいけないと思われるからです。
この映画は、そういう意味でテーマ主義から脱して、主人公のサーリャ(嵐莉菜さん)の普通の日常がきちんと楽しく描かれています。
このことはどんな立場の人であっても、地続きの同じ人間であることを私たちに伝えてくれます。
その上で、だからこそ入管の独善のひどさが際立ってくるのだ、とも思われてきます。
主人公のサーリャの家族は、サーリャ役の嵐莉菜さんの実際の家族というのを後で知りました。
その自然な演技は、とても初心者の演技とは思えず、みな自然で輝いていたように思われました。
この自然な演技を引き出した監督にも素晴らしさを感じました。
クルド人達の周りからあるいは彼らへの日本人の住民からの伝達に、日本語の出来るサーリャ1人に役割が押し付けられているなどの個々のエピソードもリアリティがあって良かったです。
惜しむらくは、サーリャと家族以外のクルド人達やサーリャの恋人になる崎山聡太(奥平大兼さん)の家族親戚などとの関係性が、サーリャの友人も含めて、(家族と恋人になる崎山聡太以外)一方的なワンターンの関係性で終わっているところに、映画としてのドラマ性にまだ改善の余地があったのではないかと僭越ながら思われました。
またカットの撮り方もまだま工夫の余地があるようにも思われました。
個人的にはその点が傑作になりえなかった点ではと思われながら、その点を差し引いても秀逸な映画となっているとは思われました。