「県境の南、荒川の西」マイスモールランド 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
県境の南、荒川の西
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つらい映画である。
出てくる日本人が皆浅薄で、理不尽で、非道に見える(一人を除いて)。難民ひいては移民問題は、日本のみならず世界的な課題であり、島国の日本よりもヨーロッパやアメリカの方が深刻だろう。ほかの国がもっと直接的で苛烈な反応をしているのに比べて、日本は真綿で首を絞めるようなやり方でじわじわ追い詰めていくというか…。
この映画で描かれたような個別のケースに着目すれば、在留資格を剥奪して就労を禁じ移動の自由を制限するなどというのは、義憤に駆られるしかないが、国家は大局をかざして建前を貫こうとするのだろう。最近の北欧2カ国のNATO加盟をトルコが頑なに渋った件などもこのへんの事情が影を落としている。
映画を見ている間中ずっと不安だった。どう考えても、日本の現況からすればハッピーエンドになるとは思えなかったから。案の定主人公は強い意思を示して終わるものの、収入の道が閉ざされた未来は暗澹たるものだ。
主人公の家族役が本当の家族というのは、あとで知って驚いた。主役の女の子は好演。相手役の少年が描くジャクソン・ポロック風の絵はナゾだ。妙に禁欲的で、時折公共広告機構っぽい空気が漂うのが少し気になった。
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