劇場公開日 2022年5月6日

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「お父さんは宇宙人か?胸を張ってクルド人って言えばいい。」マイスモールランド 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0お父さんは宇宙人か?胸を張ってクルド人って言えばいい。

2022年7月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

クルドから逃げてきたサーリャの一家。幼いころに日本にやってきた彼女は、クルドの文化も知っていれば日本の生活にも馴染んでいる。家族は、優しく懐の深い父と、日本しか知らない妹と弟。その家族に突き付けられた、在留カードが無効、という試練。展開はとてつもなくシリアスだけど、けしてダークサイドに落ちないのは、サーリャ自身の人間性だろう。そしてそう育てた父だろう。
祖国を追われ日本にも居場所が見つからぬ、気の毒な彼ら。でも、日本にやって来たクルド人がすべて真っ当な善人とは描いていないあたりがリアル。出てくる日本人も、もちろん親切な人もいるが、大抵は親切なようでいて、薄っぺらいし、手を貸さなし、付け込むような人たち。自分もそうならないように、せめてこの映画を見た人だけでも、もし目の前にサーリャたちのような人が現れたら、自分のできる小さなことから、手を差しのべられるといいと自戒をこめる。
切実な現状は、最後の最後までこの家族を苦しめて、選び難い選択を強いる。最後の父娘の会話は、できればクルドの言葉がよかったと思うけど。
サーリャの見つめる川の向こうの東京はまるで異国で、川は国境のようだった。
まだまだ彼女を待ち受ける困難は、続くのか。それがいま日本にいる彼らの現実。だけど、日本はあなたたちが求めるほど豊かではないんだよなあ。それも歯がゆい。

栗太郎