劇場公開日 2022年5月6日

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「島国じゃぱん」マイスモールランド kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0島国じゃぱん

2022年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 17歳のさっちゃんが可愛かったために最初から最後まで泣きっぱなしでした。上映最終日だったために駆け込み鑑賞となりましたが、ずっと気になってしょうがなかったのも確か。

 今日、スーパー銭湯に行った際、近くにいたオジさんたちの会話を耳にした。「タイ人の○○君、知っとるやろ?あいつ360万稼いで国へ帰ったそうや」云々といった会話。あぁ、出稼ぎ労働者ならいっぱい稼げるんだな~などと聞き耳を立ててしまったのですが、この映画を観てふと思い出してしまいました。なぜ稼ぎに来る外国人は稼げて、難民は就労出来ないんだ?そんな知識すら持ち合わせていませんでした(恥)

 日本が難民受入れに消極的なのは知ってました。この作品の場合には日本語ペラペラの主人公サーニャをはじめとして、一家全員日本語がしゃべれる。父親は仕事もしてるし、サーニャだって大学合格を目指しているくらいだ。それがある日突然難民申請が不認定・・・愕然!さらに父親が捕まってしまい、入管に収容されてしまったのだ。

 自分の居場所、アイデンティティー、未来・・・何もかもがわからなくなり途方に暮れるサーニャ。コンビニもクビになってしまい、大学どころか生活が・・・なんかね、入国管理局って何様なの!!と憤りを感じながらも、これが現実の日本。刑務所の囚人のような扱いをされる、これがオ・モ・テ・ナ・シなのだ。裏ばかりなんだねぇ・・・そして「仮放免」という言葉も勉強になった。

 ウクライナ難民についても第三国を通せば「避難民」として受入れるみたいだけど、多分長期間受入れにはしないだろうし、難民認定率1%未満の日本という国に来た難民はほんとに可哀想。スリランカ人女性ウィシュナさんの死も話題になったばかり。

 埼玉県川口市・蕨市は日本に住むクルド人難民の6割を占めているという。2021年には入管難民法改正案が否決されたが、まだまだ残されている問題は多い。そんな社会問題をテーマにサーニャの心の揺らぎが絶妙に描かれている。仕事も生活も、そして難民の心さえも奪っていく入管。

 就労や県外への移動禁止、医療保険に入ることが出来ない。そんなスモールランドに縛られた家族。荒川の県境をまたぐことで反発してみる伏線やトルコと日本の石といった話が全て胸に刺さる。もっと驚いたのがサーニャが卒業した小学校に色んな国の言葉が壁に書かれていたことも印象的。彼女が一種の国際的感覚を身につけることにもなったのだろう。思い出しただけで泣けてくる・・・

kossy