スワンソングのレビュー・感想・評価
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万引きは犯罪です。
引退し、終末期を迎えている元高級ヘアドレッサーが、嘗ての顧客の死に化粧を頼まれ出かける話。
嘗て親友であったけれど疎遠になっていたリタの死と、遺言での依頼を聞いて1度は断った主人公だったけれど、平静ではいられず施設を抜け出し…。
ロードムービーといっても1つの町での1日の出来事で、実際にやったら1日じゃ絶対無理でしょうにという中味だし、回顧といってもエピソードは自分語りで、そこに出て来る人との深いエピソードみたいなものは殆ど無し。
それでもしっかりとしっとりさせる場面はあるし、コミカルにみせるところもあってツッコミを排除させるはでなかなか面白かった。
クラウンローヤルに王冠がないのは狙いかとか思ったのは勘繰り過ぎですかね…。
次の世界に行く前に観たい映画
まず出だしから何しろカッコよかった。
おー、オシャレに始まるんだな、と思ってたら急に寂れた老人ホームになり、お世辞にもキレイとは言い難いくたびれたスウェットを着たどこにでも居そうなお爺ちゃんが出てくる。頑固なのは言動でわかるけど、それ以外に特に特徴がない。
けど、このお爺、吸ってるタバコが妙に色気のある葉巻みたいな細い洒落たタバコで、なんかここにまず予感を感じるのよね。そしたら、このお爺は実は地元では有名なヘアメイクドレッサーだった過去があって、それゆえかつての親友の死化粧を頼まれたことから話がどんどん展開していくのだけども。
まあこの人、他人の言うこと聞かないし、自分のやりたいことはやりたいように全部やっちゃうし、目的のためなら手段を選ばないし、ちょっと周りにいたら手を焼くだろなと思うけど、とても魅力的なお爺。
あんなにくたびれてたのに、帽子、服、化粧品、と本人の魅力と愛嬌と過去の栄光から、身綺麗になるアイテムを手に入れるたびに段々元気を取り戻していくのが観ていてとても楽しかった。
なんであんなくたびれてたのか、なんでそんなに頑なに過去の出来事にこだわっていたのか、彼がずっと蓋をして見ないようにしていたものたちが、少しずつ色んな場所から飛び出してくるたびに、紐がするする解けるようにわだかまりが溶けていく。
その度に一緒に泣いてしまった。
なんというかね。
もう人は絶対死ぬのでね。
どんな風に死ぬのかはもちろん選べないことの方が多いと思うけど、けどもうこれだけやり切ったから次の世界に行ってもいいかな、と思えるような死に方を私もしたいなと思った。
そして、なによりも自分が本当にやりたいことや大事にしていることは、悔いが残らないようにやり切って人生は終えるべきね!
そして私も、また会いましょう!って言いたい。
パット、あなたとにかくカッコよかった!
15歳の娘と観たけど、私はエンドロール観ながらも涙が止まらなかったし、彼女は上映後のトークショーで振り返ってるのを聞いてるうちにまた泣いてしまっていた。
いい映画だったね!観れてよかった、連れてきてくれてありがとう、が感想でした。
私が1番好きだったシーンは、車椅子で道路をドヤ顔で走る?とこ。笑
10年後にまた観たい映画。
おすすめです。
本当たくさんの方に観てほしい!!
普遍的な友情の物語
Fan's Voice( @fansvoicejp )さんの試写会で拝見。
想定外で、ゲイ映画で泣けるとは我ながら驚き。
感動のロードムービーでした。
「亡き友への気持ちを乗せたメイク」なんてテーマっぽい予告編に惹かれたのと。
『悪魔のはらわた』の博士、『アイアン・スカイ』の総統、『バクラウ 地図から消された村』のマイケルなど、250本以上の映画で渋い役や、怖い役で脇を固めるウド・キアが、ゲイ役で主演ってだけで興味が出て応募したら当たりましたが。
これ、試写会で観てよかったのかな、ちゃんとお金払って観なきゃいかんかったかな、と思いました。
監督のゲイ文化や故郷へのラブレターであるとともに、性別には関係のない、超越した普遍的「友情」ってあるんだなと思わせる、真摯な作りに感心しきりです。
ゲイ・カルチャーへの回顧と意地
引退したゲイのヘアメイクドレッサーが、亡き親友の最後のメイクを施す旅に出るロードムービー。昨年の東京国際映画祭で見逃してしまったので、是非ともチェックしたいと思っていた。
何といっても主役のウド・キアの老境演技が光る。飄々として洒落っ気たっぷりな老人ぶりが実に痛快。『プリシラ』でドラァグクイーンを演じたテレンス・スタンプ然り、若かりし頃に美青年として名を馳せた役者が年齢を重ねてLGBTQ+の役に扮するというのは、ある意味で理に適っているのかも。もっともキア本人はゲイらしいが。
寄る年波に勝てず、静かに人生を終えようとしていた者が、亡き友のために再起する――タイトルこそ「白鳥が亡くなる直前に最も美しい鳴き声を出す」という意味だが、裏には失われつつあるゲイ・カルチャーへの回顧と、「まだまだ消えるわけにはいかない」というトッド・スティーブンス監督の意地を感じる。
地味だけど、こういうテイストの作品も年に一本は抑えておきたい。
ウド・ギアが演じた「ベニスに死す」
ラストシーンは、「ベニスに死す」のリドの海岸で誰にも看取られず死んでいくダーク・ボガードを彷彿とさせる。この作品は、ウド・ギアが演じた「ベニスに死す」だった。最晩年に、老いた人間が夢みる事は、未来への希望ではなく、過去の清算なのだろうか。
ウド・キアの軽妙洒脱で、人生の重みをズッシリと感じさせる存在感は、この作品の生命線。色気すら感じさせる77歳だった。
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