劇場公開日 2022年8月26日

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「歩んできた道を再び解放した先にある清々しさこそ 人生の到達点なのかもしれない」スワンソング 甘酒さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0歩んできた道を再び解放した先にある清々しさこそ 人生の到達点なのかもしれない

2022年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ヘアメイクドレッサーとして一線で活躍してきたMr.パット。
今は、老人ホームで余生をただ消化しているように過ごしているある日、
昔仲違いしたままの大切だった親友女優の死を知らされる。
その彼女からの遺言はパットに死化粧を施してほしいという。ものだった

アーティストであるからこその意地とプライド。
老いにより過去の自分にできた事ができなくなってしまうことへの恐怖や時代や流行の変化。そして何より紛れもなく老いていた自分。
ある意味、それは彼にとって自分の一番大切な人生の核を失っているようだったが、
大好きで大嫌いだった彼女を思い、心のしこりに突き動かされ、
そこからの主人公の葛藤と解放の混在の様は実に眩しく描写されていて
あの頃の自信とプライド、そして忘れ得ない友情と情熱を必死に手繰り寄せる姿は胸が苦しくなるほどに楽しそうで美しい。

1990年代の社会が抱えていたHIVという現実に直面した病の恐怖
本人たちの生死は勿論、社会から畏怖される憤りや悲しみ。
彼らが彼ららしくいれる世界の大切な友人や恋人との絆が
とても直球的に映像として美しく素敵だった。

【終活】という言葉があるが
これこそが本当の人生の【終活】だと思う。
会いたい人に会いに行き
見てきた場所を目に焼き付けて
やりたいようにやっていた頃のようにまた思い切ってみたり、、
そして、ありがとうと言いたかったのに言えてなかった人
ごめんねと言いたかったのに言えてなかった人に
ちゃんと今の心を伝えに行く。
そして
“自分の人生は、まぁ素晴らしかったかな。と清々しく思えれば最高!
やっぱり一度きりの人生。
最期まで諦めたりしないで、後悔しない人生にしておきたいな。と思わされた力強く優しい愛に溢れた素敵な作品

甘酒