「灯滅せんとして光を増す」スワンソング レントさんの映画レビュー(感想・評価)
灯滅せんとして光を増す
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かつて街一番のヘアメイクドレッサーであり、週末はバーの舞台でスポットライトを浴びていた主人公パトリックは仕事と愛する恋人を失い、いまや抜け殻のように老人ホームでの日々を送っていた。
無気力にペーパーナフキンを折りたたみ続け、陰でタバコをふかすだけの日々。
ただ黙ってこのまま朽ち果ててゆくしかないのか。ホームで唯一心を許していた老婆の衰えぶりを目の当たりにして彼は決心する。
かつての親友が亡くなり死化粧の依頼にこたえるために着の身着のままでホームからぬけだすのだった。
彼の人生の輝きが凝縮された街へと戻り、死に別れた最愛の人や友人との再会に浸るパトリック。
彼を知る街の人たちの援助や万引きで得た化粧品を携えていざ葬儀場へと向かうが、親友との確執からドタキャンしてしまう。最愛の人の葬儀に来なかった親友を彼はどうしても許せなかった。
ドタキャンしたその足で彼が向かったのはかつて彼がスポットライトを浴びたバーだった。そこで舞台に出るショウガールのためにヘアメイクをする。そして彼も思い出のシャンデリアを自身にヘアメイクしかつての舞台に躍り出る。彼のショウは電流が流れるほど痺れるものだった。
輝かしい過去の時代に戻った彼は電動車椅子に乗り多くの車たちを従えて葬儀場へと向かう。
かつての愛弟子でさえ匙を投げるほど衰えた親友の亡骸にパトリックも断念しかける。しかし親友との魂の会話で確執を解消し、人生最後のヘアメイクを完成させた彼はその瞬間息をひきとるのだった。
まさに灯が消える寸前に最後に強く輝くようにパトリックは自身の人生最後の輝きをみせて天寿を全うするのであった。
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