「ゲイ・カルチャーへの回顧と意地」スワンソング regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
ゲイ・カルチャーへの回顧と意地
引退したゲイのヘアメイクドレッサーが、亡き親友の最後のメイクを施す旅に出るロードムービー。昨年の東京国際映画祭で見逃してしまったので、是非ともチェックしたいと思っていた。
何といっても主役のウド・キアの老境演技が光る。飄々として洒落っ気たっぷりな老人ぶりが実に痛快。『プリシラ』でドラァグクイーンを演じたテレンス・スタンプ然り、若かりし頃に美青年として名を馳せた役者が年齢を重ねてLGBTQ+の役に扮するというのは、ある意味で理に適っているのかも。もっともキア本人はゲイらしいが。
寄る年波に勝てず、静かに人生を終えようとしていた者が、亡き友のために再起する――タイトルこそ「白鳥が亡くなる直前に最も美しい鳴き声を出す」という意味だが、裏には失われつつあるゲイ・カルチャーへの回顧と、「まだまだ消えるわけにはいかない」というトッド・スティーブンス監督の意地を感じる。
地味だけど、こういうテイストの作品も年に一本は抑えておきたい。
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