劇場公開日 2025年8月30日

COW 牛のレビュー・感想・評価

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4.0牛にはなれない人間が牛にどこまでも近づこうとする試み

2025年8月31日
PCから投稿

アンドレア・アーノルドがとびぬけて(あらゆる)動物への愛着があることは彼女のどの作品を見ても明白だが、そのアプローチは「カワイイ!」系とはまったく違っていて、ミニマムなお話をひとつの事象として自然とか地球とか世界みたいな大いなるものに放り込む。そ
の世界観を成すもののひとつが動物であって、人間も動物も、善とか悪とかカワイイとかではなく、ただそこに存在して生きているのである、という大前提のもとで映し出している。このほとんど牛しか映らないドキュメンタリーでもその姿勢はいささかも変わっていなくて、エコとか動物との共生とか家畜の悲哀とか動物愛護とか、そういうものはすべて人間の都合でしかないと突きつけるように、徹底したドライな作りを保っているにも関わらず、俯瞰ではなく牛の目線に限りなく近づこうとするのは、やはりアーノルドがとことん動物の近くにいたい映画作家ということのなのだろう。届かないとわかっているのに手をどこまでも伸ばそうとしているかのような。

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村山章