「欧米人にとってアフガン人の命が安すぎる」ザクロが遠吠えする頃 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0欧米人にとってアフガン人の命が安すぎる

2021年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アフガニスタンの物語を、隣国イランの女性監督が監督した物語なのだが、やはりアメリカやヨーロッパ諸国とは視点のあり方が違っている。本作は、オーストラリア軍の誤爆によって2人の少年が殺された事件を基にしている。主要な登場人物は、その少年たちとドイツからやってきたジャーナリストだ。少年たちとジャーナリストは、とある爆発の現場で出会う。ジャーナリストは開口一番「タリバンがいるのか」と問う。しかし、この映画でアフガン人を苦しめているのは、米軍やオーストラリア軍の誤爆なのである。
少年たちはサッカー選手に憧れ、夢を語る。それを無残にもオーストラリア軍の空からの誤爆が打ち砕く。誰がアフガニスタンをめちゃくちゃにしているのだろうか。タリバンも非道だろう。しかし、国連軍は非道じゃなかったと言えるのだろうか。空から突然爆弾が降ってくる恐怖を植え付けられたら、誰だって普通はそんな連中を支持するはずはない。
最後に実際の、オーストラリアのニュース映像が流れる。外務大臣が遺族への補償はすると言っているのだが、提示された金額はわずか数百ドル。この命の安さはなんなのか。

杉本穂高