劇場公開日 2023年1月20日

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「頼れるのは己だけ」母の聖戦 regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0頼れるのは己だけ

2022年10月11日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

難しい

メキシコで犯罪組織に誘拐された娘を奪還しようとする母親の闘いを描いたクライムドラマだが、劇伴が一切流れないばかりか、ドラマティックに盛り上げる演出を徹底的に排除。母親が見るものや体験する事を、観客にも容赦なく味わってもらおうとドキュメンタリータッチで捉えており、2時間15分という尺もあってか、観ていてとにかく体力を要する。裏を返せば、それだけメキシコという国の誘拐事件が深刻である事の裏返しでもある。
警察は何もしてくれず、別れた夫も当てにならない。だったら頼れるのは己だけと単独で動き、ついには軍隊まで巻き込む。子を救うべく暴走していく母親が主人公の映画を、“『母なる証明』モノ”と勝手にジャンル分けしているが、間違いなく本作もその1本に加わる。このジャンルでは近作の『ドライビング・バニー』も含むと思うが、『ドライビング・バニー』も本作も、貧困層に厳しい国の社会事情が裏テーマにある。
暴力の連鎖が暴力を呼び、誘拐犯側にもやんごとなき事情があるという点で、虚しい結果になるのが大半の『母なる証明』モノだが、さて本作はというと…ラストの解釈は観た人の判断に委ねられるが、少なくとも監督の意図するもので概ね納得したい。そう思わないとあまりにも報われなさすぎる。

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