「イラク人によるISISとの死闘」モスル あるSWAT部隊の戦い CBさんの映画レビュー(感想・評価)
イラク人によるISISとの死闘
モスルという街をめぐる "イラク人による"(軍隊とは別な、モスル出身者で作った警察SWAT組織)ISISとの闘いの話。日本ではISISという言葉が一般的に使われているが、彼らは「ダーウィッシュ」と呼ぶ。
叔父を殺された新人警官カーワが、ジャーセム少佐が率いるSWAT部隊に救われ、その一員として闘う姿を描く。全編、闘いで、ずっと撃ちまくっている映画だった。クールでソリッドな絵が続く。そこにはきれいごとはない。現実を誇張した過激な描写もなく、ありのままなのだろうと感ずる。
俺は、冒頭のセリフと途中のシーンでイラン兵に言うセリフが、この映画の主題と感じる。「米国は町の再建など考えずに破壊するだけだ」「イラクには、フセインも米国もイランもいらない」 さらにSWAT部隊が(中央の指令に反して)行動しているその内容も。
そのすべては、みなさんにも観てもらって感じてもらいたい。俺は、「戦争」というマクロな視点からみた世界と「俺の住んでいるこの街、そして俺の家族」というミクロな視点からみた世界は、当たり前だけど同じものなんだということを、この映画は伝えたいのだと思う。彼らが兵士ではなくモスルという街の警察官だからこそ感じる「米国は町の再建など考えずに破壊するだけ」なのだろう。
俺は、他国の戦争はマクロな視点から見ることが多いし、そうすべきだと思っている。けれど、そういうスタンスをとるための資格というか義務みたいなものとして、上記したようなミクロな視点で起きていることを決して忘れてはいけないと思う。なかなかできないけどね。そういう意味で、俺にとっては、とてもためになる 102分でした。
雑誌「ザ・ニューヨーカー」に掲載された記事が米国で話題になったこと、それを映画として伝えなければいけないと考えたルッソ兄弟、その命を受けたカーナハン監督。俺は、いまのアメリカという国をそんなに好きではないけれど、こういうものをちゃんと生み出すところはあらためて尊敬する。