劇場公開日 2021年12月3日

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「エレナ・カンプーリスがブレイクしなくてもどかしい」ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5エレナ・カンプーリスがブレイクしなくてもどかしい

2022年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

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観た人の多くがすでに語っているように、1980年代に個性的な音楽スタイルでややマニアックな支持を集めた英国のロックバンド「ザ・スミス」の楽曲が好きかどうかで、本作の評価も大きく違ってくるだろう。ギターサウンド主体の英国ロックで80年代に先行していたのは、セックスピストルズ、ジャム、ポリスあたりが思い浮かぶが、ジョニー・マーのギター奏法、アルペジオ(分散和音)を活用した印象的なリフがバンドサウンドの土台を作り、モリッシーのダンディーと軟弱がほどよくミックスされたボーカルで完成する、あのスミスの立ち位置は今思い返してもかなり独特だった。

そんなスミスにまつわる逸話、なぜかコロラド州デンバーで起きた「ザ・スミスのファンによるラジオ局ジャック事件」に着想を得て、フレットレスベースのイノベーターだったジャコ・パストリアスのドキュメンタリー映画も作ったスティーブン・キジャク監督が脚本も兼ねて作った青春音楽映画。事件そのものは他愛なく、結果的に犯罪性が低くて不起訴に終わったそうだが、若気の至りで何かやらかしてしまうのは、もちろん音楽ファンに限らずよくあること。「アメリカン・グラフィティ」や「ハイ・フィデリティ」などと同様、ラジオDJやレコードショップといったアメリカの音楽文化を下支えする存在をリスペクトして描いている点もアメリカ映画の伝統を感じさせる。

まあ今回は音楽的な話が多くなったが、音楽抜きにひとつ書き残しておきたいのは、本作でキャストの3人目にクレジットされている、シーラ役エレナ・カンプーリス(珍しい姓はギリシャ移民の父から)のファニーでキュートな魅力がこれまであまり評価されないようで、なかなかブレイクしないのがもどかしい!ってこと。「ビフォア・アイ・フォール」ではちょっと痛い感じの高校生を演じていて、さほど大きな役ではないものの印象に残るキャラクターだった。2022年米公開予定のSF映画「WifeLike」ではトップにクレジットされているので、日本公開を楽しみに待つか……。

高森 郁哉