「【”涙が流れる歌は、いつか君の人生を救う!”ザ・スミスのジョニー・マーが奏でるメロディとモリッシーの詩が、自分自身や将来について思い悩んでいる若者達が自分を探し彷徨う物語とのシンクロが絶妙な作品。】」ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”涙が流れる歌は、いつか君の人生を救う!”ザ・スミスのジョニー・マーが奏でるメロディとモリッシーの詩が、自分自身や将来について思い悩んでいる若者達が自分を探し彷徨う物語とのシンクロが絶妙な作品。】
ー 今作は、アメリカコロラド州のデンバーが舞台である。
ザ・スミスのファンは、英国と日本が中心であると思っていたので少し驚くが、コロラド州のデンバーで、実際に有った”ザ・スミス”のファンがラジオジャックした事件が下敷きと知り、納得する。
スーパーで働くクレオ(ヘレナ・ハワード)は、大好きな”ザ・スミス”解散のニュースが流れても普段と変わらない日常に傷つき、レコードショップの店員ディーン(エラー・コルトレーン)に「この町の連中に一大事だと分からせたい」と訴える。
ディーンはクレオをデートに誘うが、友達ビリーが軍隊に入るので仲間(シーラ、パトリック)と集まるからとクレオは出かけていってしまう・・、とサイトに記載されている通り、物語は始まる。ー
◆感想<Caution! やや、内容に触れています。>
・冒頭、”Bigmouth Strikes Again” が大ボリュームでかかった際には、一聴した瞬間でスミスに嵌った中坊時代に心は飛ぶ。
そして、今作では20曲以上の、ザ・スミスの曲が流れるのだが、重要なシーンで流れる曲は歌詞が字幕で出る。
”Bigmouth Strikes Again”は、この場合、”実際に有ったラジオジャックの物語を、又やるよ!ってことかな・・、”と私は解釈し、心躍りながら、ついでにお客さんが二人しかいなかったので、マスクの下で一人カラオケしながら、今作を観賞した。
・突然、銃を突き付けられた、地元のヘビメタ専門のラジオ局のDJが、ディーンの指示通りにザ・スミスの曲を流す中で印象的なのは、”This Charming Man"が流れたシーンである。
”吊るされたDJ"はこの曲を聴き、”お!”と言う顔をし、使われている楽器をディーンに聞くのである。
そして、彼らは、ブリティッシュロックとメタルの壁を越えて、音楽を愛する者同士、心が通じていくのである。
- ファンの方はご存じの通り、”This Charming Man"はザ・スミスの中でも特に愛されている、3分間ポップの傑作である。ジョニー・マーのポップセンスが光る逸品でもある。-
・マドンナソックリの恰好をしたシーラ(エレナ・カンブリーズ)がボーイ・フレンドとの関係に悩むシーンで流れる”Sheila Take A Bow"の挿入のタイミングと、詩の内容と劇中のシーラの想いも絶妙なシンクロニシティである。
- スージー・スーにそっくりのゴシック・ロック好きのお姉さんの姿も、少し嬉しい。-
・”全世界の万引き犯たちよ、団結して引き継げ!”とモリッシーが謳いあげる、”Shoplifters Of The World Unite"は、正に今作のヒロイン、クレアの事を示しており、ディーンの行為はクレアの想いを引き継いでいるのである。
徐々に、ディーンのザ・スミスを愛する心と、局の外で”ザ・スミスは永遠だ!”と書かれた言葉を掲げる若者達の姿を見て、DJが言った言葉が素晴しい。
”涙が流れる歌は、いつかお前らの人生を救う!”
・警察に捕まったディーンの保釈金を親の財布から抜き取り、警察に駆け付けるクレア。だが、既にディーンはDJの粋な計らいで出所しており、クレアはディーンとキスを交わし、二人は車で警察を後にするのである。
そして、最後に流れる”How Soon is Now?”
”私は、物事を間違った方法で行っていますか?私は人間であり、愛される必要があるのです・・。”
スティーヴン・キジャック監督、見事過ぎるぞ。
<今作は、ジョニー・マーが奏でる唯一無比のメロディに乗せて、オスカー・ワイルドが大好きなモリッシーが書いた、ナルシスティックで、シニカルで、メッセージ性溢れた歌詞を、自分自身や将来について思い悩んでいる若者達が自分を探し彷徨う物語に見事に取り込んだ、ザ・スミスファンには、タマラナイ作品なのである。>
NOBUさんへ
いつもありがとう御座います。ノーザンソウルは音楽が個人的な嗜好ドンピシャだったので。映画そのものは典型的なBです。↓こう言うのがお好きなら、ハマるかも知れません!
The M.V.P.'S - Turnin' My Heartbeat Up