「ガガ様の縦横比率が気になってしまうが、本物そっくりで驚いてしまった。」ハウス・オブ・グッチ カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ガガ様の縦横比率が気になってしまうが、本物そっくりで驚いてしまった。
老舗同族企業は時代に合わせ変わらないと生き残って行けないという割と普遍的は話だが、グッチの場合、変わるきっかけとなったのがこのパトリツィアが一族の末席に加わったことだ。
彼女がマウリツィオ・グッチと出会った時は純粋な恋愛感情のみのように見えたが、マウリツィオがグッチの経営に携わるようになってから、徐々にグッチというブランドと資産をあたかも自分のもののように守ろうとする言動が始まりだす。
中小企業の成り上がり経営者の娘ゆえに出自や教養がある種のコンプレックスなのか、この華麗なる一族の一員でいる事でそれを少ながらず補完出来ると思ったが、世間知らずで現実を見ようとしない創業家一族にこの絶対的なブランドを任せるといずれは廃れてしまう、という懸念から次第に支配欲のようなものが現れてきてしまう。(実際は単に財産を独り占めしたかっただけのようだが)
実話を元にしているが、品も教養もなく厚かましいが強い野心はあるというこの役はガガのためにあるかのようで、ビジュアルもWikipediaにある実物画像と比べると相当なアプローチぶりと言っても良いと思う。
その歴史、富と名声からプライドの高いグッチ一族だが、事件当時でもたった数十年の歴史しか無いある意味成り上がりでもあり、アルド役のアル・パチーノはその辺りの雰囲気を上手に表現していると思った。
マウリツィオ役のアダム・ドライバーの経営への無頓着さと童貞感と頼りなさ感、パオロ役のジャレット・レトのこだわりのダメ男ぶりも上流階級の没落を滑稽に見せる良いスパイスになっている。
上映時間157分とかなりの長さで多少の中弛みは感じるものの、展開が早く飽きさせないよう一定おきに抑揚をつけた配分はさすがリドリー・スコットの職人技と言えると思う。