シチリアを征服したクマ王国の物語のレビュー・感想・評価
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世界の歴史はこうなっている
世界とはこうなっているという、大変に的確な寓話。人間とクマが争っているシチリア。人間の国王は、独裁で人々を従えており、息子を助けたいだけのクマを暴力的に対応する。そんな人間たちにクマたちは知略を用いて戦を挑み、息子を奪還、さらに人々を圧政から解放する。シチリアは、クマが支配する国となる。
しかし、クマもまた権力を得ると、腐敗し、欲望にまみれていく。どんな正義の勢力も権力に吞まれるとおかしくなってしまう、善良だったクマでさえも。
世界の歴史は往々にしてそういうものだった。映画は、それに加えて若い世代の希望を描いている。クマと少女の絆を通して、それでも分かり合う努力は大切だと伝える。
この作品は、児童文学を原作した子供向けアニメーションと言っていいが、子ども騙しではない。世界がこうなっているんだということを、分かりやすく深く伝えている。本当の考え抜かれた子供向け作品は、大人の心すら撃ち抜けるという最良の見本だ。
いわゆる外国アニメ枠祭りで見た作品。結構よいかなというところ。
今年275本目(合計925本目/今月(2023年8月度)14本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。
イタリア、フランス系のアニメを集めた「アニメ祭り」の中で見に行きました。実はこの作品、見逃してしまったのですよね…。そして映画館によっては「何回見ても日ごとの料金しかない」(1本でも3本でも同じ)というところもあるんですね…。こういった事情なので吹き替え版か字幕版かという選択権がなく、吹き替え版でした。
内容としてはどうなんだろう…。クマにせよ、動物と人間の共存というのが一つのテーマにあり、それが全体に流れているような気がします(ほかにもストーリーはありますが、この点をメインにしたかったのだろうと思われます)。
特筆すべきは映画のアニメとしての色使いの素敵さで、「マイエレメント」や「フランスの3つの物語」(名前忘れた…。トルコの揚げパンがどうだのというミニストーリーが3つでるお話)等に通じるところがあります。逆にいえば日本の一般的なアニメの色使いとは明らかに異なるので好き嫌いは分かれるところはありましょうが、それはもうこれだけ時期が立っていれば色々なサイトで評価もあれば、今でも予告編等見ることができるので、事前にこういった点は確認できるのは良かったです。
惜しむべきはパンフ等が何もなかった点ですが、これも正規の公開日からだいぶ遅れていて、そもそも「フランス・イタリア等のアニメ祭り」の一環で復刻上映されたにすぎず、それらの各作品にまた公式パンフだの何だのということを求めるほうが(大手の映画館ならともかくも、ミニシアターには)無理なので、そこは減点なしにしています。
今ではどうもVOD落ちしているようですが、映画館で見ても十分楽しめる作品だろうといったところです。
北欧?欧州っぽいアニメーション
腹が減って山を下りてきたクマと人が団結して大団円、というのが前半で、彼らを指導する立場にたったクマ(レオンス王)は「蜜の時代」と呼ばれる人とクマが永遠に栄えると思われた時代を過ごした。ところが後半は、とある盗難事件の犯人捜しで「クマは盗まない」と人だけを調べたことをきっかけにして、人とクマの調和はみるみる崩れていく・・。
北欧?欧州っぽいアニメーション
色の対比で示される四季の描写はみごとなものでした。
以下は印象的だったセリフたちですが、ややストーリーがねたばれしてるかもしれないので、気になる人は観てから読んでください。
「山の生活の方が単純だった」と語る苦しみの中のレオンス王
「王子ならmになの手本となれ」と強要し。とうとう息子を牢獄に入れてしまうレオンス王。
「王は息子が嫌いなの?」「・・・愛しすぎていたのかもな」
鑑賞動機:ディーノ・ブッツァーティ10割
原作未読。『待っていたのは : 短編集』を読んで、かなりダメージを受けたので、このテイスト(あれとかほぼ日野日出志ホラー)だったらどうしようと、おっかなびっくり鑑賞。
てっきりイタリア語かと思っていたら、フランス語のようで。アルメリーナの声(レイラ・ベクティ)を聞くと、吹替伊藤沙莉は容易に想像できた。いい声。
前半は児童文学で想定される範囲、後半はもっと大人向けにシフトした感じ。
で、熊爺は何と言ったのか。
jig theaterにて。
実にクマクマしいクマファン必見のクマアニメーション
新宿武蔵野館、字幕版で鑑賞。原作イタリアだがアニメはフランス制作で仏語。クマの王様がイケボである。
監督はイラストレーター、バンド・デシネ作家で、色彩やレイアウトは美しく、ビビッドカラーも子供が見ても楽しいだろう。
旅芸人と女の子が語り手となることで、飽きさせない工夫もある。
メインのキャラは手描きしつつ、モブクマや兵隊などCGキャラを併用。グラデーション影の効果もあって柔らかい印象を受ける。
クマたちは腹ペコだが勇敢に戦い、楽しいときはダンスもする。しかし、王国の支配者となると、彼らも堕落の手を逃れることはできなかった。
シチリア島は何度も征服され支配者が変わっている土地で、歴史面も合わせて見るとより楽しく見られるだろう。
大人から子供まで広くオススメしたい。
クマ達に会いに行こう。
人類に対する最大の教訓の物語がポップなアニメーションになるなんて、めっちゃエッジが効いてる。童話が原作なんですね。クマは山へ帰り、クジラは海を選んだ。人類は裸を恥ずかしいと思う唯一の動物でいつまでも変わることなく権力が大好きで、世界中で未だに土地の取り合いをしている。
「クマはハダカのほうがいい」ってコピーも実に上手い。更に洞窟で一夜を明かそうとした旅する語り部とその助手が目の前に現れた老クマに対して読み聞かせるって構成も面白い。さてさて、その老クマの正体とはいかに。
かつてシチリアを征服したクマの一族。でも決して権力に胡座をかいた人間側だけを悪者にしていないというこのバランスも良かった。そこから何を学ぶかということが最も重要。
シンプルだけど色彩豊かで魅力的なキャラクターも楽しい。最後にクマは助手に何て囁いたのかな。あの心踊る彼女を見て、油断させといてクマが助手を丸呑みにするんじゃないかと思ってヒヤヒヤしていた自分自身を軽蔑しました(笑)
物語が終わり、語り部と助手は次の町へ。クマは寝床へ。そしてきっと人類は今日も国境へ。
他国の昔話らしいけど…
アニメーション映画を自分のお金を払って初めて観賞。何が言いたいのか…😣動物園と人間は共存できない?適材適所?仲良く生きよう?
ま、日本の昔話も教訓みたいなモノははっきりしないけど、こんなにすっきりしないのは久しぶり。皆さんのレビューを読んでモヤモヤを解消します‼️
綺麗なアニメーションでした。
字幕版を鑑賞しました。
とっても綺麗な動く絵本のようなアニメーション映画でした。ヨーロッパのアニメーションは本当に色が綺麗なんですよねぇ。アート作品のようです。全カットをポストカードにしたくらい。
1940年台の絵本が原作ということで、人間の業を戒めるような寓話になっている気がします。この頃も今も人間の醜さは変わっていないし、その伝播力、伝染力も変わらず・・・。ぜひ、世界のリーダーを争う国のトップには自らの行いを客観的に振り返り、修正していく存在であってほしいなぁって思います。
お話はそこそこ難しいテーマではありますが、お子様と一緒に楽しめる作品だと思います。大事なテーマを扱っていると思いますしね。
絵本的で寓話的なクマさん物語。
アニメではあるが、感覚的には絵本に近い。
アニメとして観ると少し古いが、フランス的とも言える。
寓話的であり、子供向け…といっても、大人が観ている。
龍の表現などは、紙芝居のようなので、戦いのシーンを無くし、もう少し静かな表現に徹した方が良かったかもしれない。
紙芝居的なトーンで、静かに寓話を語れば、間延び感が無かっただろう。
ぜひ劇場でご覧ください。
権力や環境によって変化してしまうのはクマも人間も同じ……
ひとり息子トニオを人間に誘拐されたクマの王国の王レオンスが主人公。
人間たちはクマを恐怖の存在と思い、攻撃をしかけてくる。クマたちはそれでも平和的に解決しようとこころみるが、人間たちは聞く耳をもたず、すぐに武力で解決しようとする。
人間だけではなく、食人トロルやゴーストたちの妨害を乗り越えて、トニオをサーカスで見つけ、人間の王を倒したことで、レオンスは人間とクマ共通の王として君臨し、クマと人間は共存して幸せに暮らしました…….というのが前半はおとぎ話テイスト全開の物語。
しかし、後半からは少しトーンが変化する。クマは自由や権力得て、人間を支配下においたクマの心情がどう変化していくのかを描いているのだ。
息子のトニオも人間の生活に慣れてしまって、魚を捕るともできないどころか、スモークサーモンの方が良いと答え、そんなことは古臭くて、新しいクマは酒やギャンブルもすると言い張る始末。
ある日、魔術師の杖が盗まれ、金庫のお金も盗まれた。友人だったサルペルトは、独裁者のようになっていく。
性格や価値観、概念といった、本質的なものは誰もが、それぞれ少しずつ違うものの、それを良くも悪くも後押しするのは、おかれている環境であるということなのだ。
今作で描いているのはもクマになぞってはいるものの、非常に教訓的なものであって、クマや人間は、本質的には変わらないが、与えられた権力や、それを取り巻く環境によって変化してしまうということを描いているのだ。
そういった黒い部分を徹底的に描くというよりは、あくまで子ども向けということもあって、なんとなく描いているのも丁度良いといえるだろう。
美しい美しい、心に沁みる傑作アニメ
ともかく美しい。最近のいかにもCGではなく、かといって往年のディズニーでもなく、傑作「白蛇伝」をはじめとする東映アニメーションを思わせる、シンプルな描線とデフォルメの美しさ。
原作は70年以上前のイタリアの児童文学だが、現代人の心にも沁みる大人の寓話に仕上がっている。最後にクマが少女にささやいた秘密がなんだったのか、誰か教えて欲しい…
平日の夜、観客は7人…知られていなさすぎ。早く見ないと見逃すよ!
動くデザイン画をみてるみたい。
フランスイタリア合作らしいけど色彩はイタリア。輪郭のクッキリした景色とキャラクターに美しい塗り絵をほどこしたよう。表面上はクマと人間が仲良く暮らす世界を絵本のごとく描いているけど差別や偏見やら今の世界にも通じるしっかりしたお話があるなー、と。まあ、まずはとにかくアニメがきれい。
アニメだから表現できる唯一無二の世界観が目の前に広がる
ヨーロッパ・イタリア発のアニメーション映画!
見慣れている日本アニメや米国アニメとは異なる良さがあって好き。
キャラクターを画の中心に置かない絵画的描写が印象的で、
さらに日本の80年代アニメを彷彿させるようなコミカルな動きがあって惹き込まれる。
ストーリーは極めて王道だけれども、表現のユニークさゆえに最後まで飽きずに鑑賞できる良作。
ここからは私個人の勝手な妄想
「80年代アニメを彷彿させる」って具体的には『ルパン三世 Part2』のことを示していて、この映画の提供がそのルパンシリーズを手掛けるトムス・エンターテイメントであるのも何かの縁なんだろうなと感じている。また、この映画の監督はイタリア、この国はルパン三世シリーズがとても人気。もしかしたら、監督も幼少期にルパンを観ていて、監督の感性の片隅にルパンのコミカルさが忍び込んでいたら面白いなと好き勝手に妄想している。
※ルパン三世 パート2は厳密に言えば1977年放送開始なので、80年代アニメかは微妙だけど、アニメにコミカルさが出てきたのは、80年代なのであえてそう表現。ちなみに、ルパン三世パート2の制作は「東京ムービー」と表記されているけど、この会社はトムス・エンターテイメントの前
愉快な物語から社会の側面を知る
オープニングから心を鷲掴み!
手前の樹木の隙間から一瞬見える二つの影。
影の正体が知りたいのに、あちらの世界とこちらの世界の間には揺らぎの画面が挟まれていてよく見えない。
「もっと見たい、もっと知りたい」という好奇心でグイグイ引き込まれていき…
視界が開ける頃には、すっかり物語の世界に入り込んでいました。
見事な導入に、まんまとハメられました〜(≧∀≦)
そこからのシンプルな線で描かれる映像美が圧巻で。
なかでも光と影の素晴らしさ。
『第三の男』を彷彿とさせる影の演出や絵画へのオマージュ。
人物の顔にかかる影から、流れる雲を感じるロングショットのパノラマは、大自然の中のちっぽけな存在だと語りかけます。
季節の移り変わりも素晴らしく
さすがは『レッドタートル』の制作会社。
延々と続くクマ達の行列にも興奮しました。
個性豊かな愛すべきキャラクターたち。
クマダンスの楽しさ。
戦いのシーンもダイナミックな迫力がありつつユーモラスに描かれていて、これはアニメの強みですよね。
とくに魔術師の使う魔法が可愛すぎてお気に入りです♪
ものすごい地響き音と荒れ狂う海は、ぜひ劇場で体感して欲しい!
そして脚本もすごい。
テンポ良く物語が進み、二転三転する展開にドキドキハラハラ。
それもその筈、トーマス・ビデガンが参加しているのです!
『預言者』に痺れてからのファンなので驚きましたが、どおりでストーリーが骨太なわけです。
しかも語り部のジュデオンの声まで!どんだけ多才なん。
(『エール!』のリメイク『コーダあいのうた』も楽しみ)
この作品に出会える子供たちは幸せです。
愉快なクマの物語から、一筋縄ではいかない社会や人間の側面を知ることでしょう。
私にとって『白蛇伝』がそうであるように、一生心に残る映画になるに違いない。。。
愛や勇気が生まれるように、劣等感や懐疑心も生まれる。
時と場合で立場を変える登場人物たちからは、保身や欲望に対する人の弱さを知ることでしょう。
そして、異なる者同士が仲良く暮らせる理想の世界の先には、わかり合える美しさとわかり合えない不思議があり、相入れない領域があることを知る。そこに踏み込めばアイデンティティの侵害になりかねない、共存と共生の難しさ。
でも、この映画から得られる最も大切なことは「終わり」の続きの物語は、いつでも自分で紡げるということ。
想像力の羽をのばせば、どこまでも広く自由に飛べることを知るでしょう。
そして、大人である私自身も、この映画と出会うことで、穏やかで優しい死生観に救われました。
◾️追記:監督のインタビューより
オーソン・ウェルズの影の使い方が好きだそうです。キャロル・リードではなく失礼しました(^^;)
その他にはヘルツォーク、タルコフスキー、70年のドイツ映画、イタリア出身なのでフェリーニはもちろん、コッポラ。とくにウォン・カーウァイを“最後の偉大な監督”とおっしゃっていました。
そして、ロングショットのパノラマがとても印象的でしたが、監督には「空間を制御したい、空間を構成したい」思いがあるとのことで、影を描くにあたりエイゼンシュテインの『イワン雷帝』を観に行ったそうです。
なるほど!言われてみれば激しく納得!!
なぜわざわざ自分のレビューに追記したかと言うと、名前のあがった監督のファンの方々にもぜひ観ていただきたいから。
随所で楽しめると思います♪
荒ぶるプーさん大集合
ヨーロッパでは親しまれている児童書が原作ゆえに、異文化、異種の共存と争いを軸とした道徳的内容となっている。言葉を喋る動物と人間のストーリーといえば『猿の惑星』があるけど、本作はそれに例えれば『最後の猿の惑星』の“その後”を思わせるような展開に。どんなに純粋な生物でも俗世間にまみれると変わってしまう皮肉。キャッチコピーの「クマはハダカのほうがいい」が、「猿は猿を殺さない」っぽくて洒落てる。
ヨーロッパ製アニメの特徴は、鮮やかな色彩と陰影の使い方に、動きが滑らかなキャラクター描写。プーさんチックなクマ達の愛らしさ、それに反比例するかのような巨大化け猫の禍々しさなどは観てるだけで楽しい。
小さい子供を持つ親、または往年の『まんが日本昔ばなし』ファンにおススメ。
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