「丁寧な再構成」聖闘士星矢 The Beginning コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
丁寧な再構成
『聖闘士星矢』だと思うと「ナニコレ」感があるが、意外と面白い。
フルCGアニメ『Knights of the Zodiac』(アンドロメダ瞬が女の子のやつ?)を下敷きにした実写版だったのね。
漫画は原案程度にしか使わずに、ハリウッド美的感覚によるなんちゃって日本テイスト & カンフーを日本と勘違いしたアクション映画として観るならば悪くない出来でした。
わざわざギリシア神話ベースに宗教観を構築し、ハリウッドらしい文脈で丁寧に再構成してて、意欲が垣間見えましたし。
この作品、興行の主戦場はおそらく過去にアニメで大ブームが起きたヨーロッパ(フランス、イタリア、スペイン)や中南米(ブラジルやアルゼンチン、メキシコ、チリ、ペルー)。
白人やヒスパニッシュらの宗教観に合わせて理解しやすいように、小宇宙(コスモ)の説明などを中心に作り上げたのではないかと推測しました。
ただ、そのために原作やテレビアニメ1話に相当する部分をねっちり114分も描いてて(フェニックスとのいざこざを香り付け程度に使用してますが)。
設定説明を無駄に長いセリフでダラダラ垂れ流した前半は、押し寄せる眠気に堪えられず、少し寝ちゃった。
また、CGを使った特撮大作である『007』や、ディズニー、マーベルMCUみたいな3億ドル、5億ドル(約6~700億円)クラスの豪華盛りとあきらかに違いました。
本作は5~6千万ドル(約80億円)の制作費らしく、日本映画の数千万円予算に比べれば破格の大金ではあるものの、人件費やCG製作費の高いハリウッドの中では貧困にあえぐクラス。
部分的にCGを使うだけのスタイルだけに、聖衣(クロス)のアルミ甲冑感、アジト内のPC機器類のしょぼさ、出てくる車の台数・兵士の数の少なさなどに、どうしても貧乏くさい安っぽさが滲み出てしまっていましたが……
それでも、なんとか耐えきれるレベルなのは、限られた予算の配分を上手に行ったのかもと。
スローモーション多用の戦闘シーンは、途中までリズムが悪く感じたものの、途中で慣れましたし。
なにより、半裸になった新田真剣佑の仕上げたリアルマッチョと、辰己(マイロック)のかっこよさなど、見どころがちゃんとあったからまだいいかな。
感覚的に喩えるならば、日本『CASSHERN キャシャーン』とか、米『スーパーマリオブラザーズ 魔界帝国の女神』『TEKKEN -鉄拳-』、英『ストリートファイター 暗殺拳』とかが近い枠に思えました。
(それは褒めているのか?)
日本『ガッチャマン』『デビルマン』、米『ドラゴンボール』ほどの事故物件ではないことは確かです。