「コスモを燃やし続けられるか…?」聖闘士星矢 The Beginning 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
コスモを燃やし続けられるか…?
話題沸騰中の『マリオ』『コナン』『東京リベンジャーズ』。これらは“原作”も人気。
ならば本作だって。
80年代に少年ジャンプで連載され、コミックもアニメも大ヒット。その人気は海外へも。
続編や派生作品も作られ、様々な媒体にも展開。そして遂に、長年のプロジェクトだったハリウッド実写化…!
“小宇宙(=コスモ)”を燃やせ! ペガサス流星拳!
…な~んて書くと如何にも知ってそうだが、以前見た3DCGアニメ映画版のレビューでも書いたが、ほとんど見た事ない。再放送とかでチラ見程度。
しかと見た事あるのは、3DCGアニメ映画版と、昨夜予習でU‐NEXTで第一話を。それと、本作。
概要は何となく知ってるような、知らないような。
キャラも星矢とアテナ(沙織)くらいしか知らない。えっと、他の聖闘士たちは…。
コスモを感じろ以前の問題。ほとんどビギナー。
なので、原作とはここが違う、ここが同じとか、色々比較する事なく一本のバトル・ファンタジーとして鑑賞。
率直な感想。ジャンプの人気作をハリウッドで実写化と言うと嫌でもアレを思い出すが、アレの再来にはならず。そこまで酷くはなかった。
かと言って、メチャクチャ面白かった!…でもなく。
良かった点、ビミョーな点、ファンなら賛否荒れそうな点…様々な意見を踏まえて、ハリウッドお馴染みの予算やCGはたっぷり駆使したA級だが、中身はB級テイスト。
スラム街で闘いに明け暮れる青年、星矢。彼は長年、生き別れた姉を探している。
ある日彼の前に謎の富豪アルマンが現れ…。
闘いの女神アテナの化身である娘シエナを護る戦士。
不思議な力=コスモを駆使する“聖闘士(=セイント)”になる運命である事を告げられる。
シエナにも運命と魔の手が迫っており…。
原作未読でもキャラや設定の改変は分かる。星矢が闘う目的(アテナ守護ではなく姉を探す為)、アルマンと対するグラードが元夫婦である設定など。
だけど、大まかな話自体は少年漫画的。
修行、危機、覚醒…。己の運命と対峙しながら、闘いに身を投じていく…。
“Beginning”として分かり易く、見易い。
が、いざ話が始まり、展開していくと…。
キャラの言動や目的、展開の荒らさや支離滅裂、どうもしっくり来ない点が多々。大長編を2時間そこそこにまとめた故ダイジェスト感は否めない。大まかな設定自体は悪くなくとも、細かな点がボロばかりなのだ。
まずどうしても解せないのは、アルマンとグラードの対立。
元夫婦で、シエナは娘。尚、本当の娘ではない。
シエナはやがてアテナとして覚醒し、世界を滅ぼすかもしれない。
かつてその力に触れ、片腕を無くしたグラード。シエナを危険視し、葬り去ろうとする。
一方のアルマンはそれでも娘を護り、信じる。
要は、後に世界を滅ぼすかもしれない存在を、手段はアレだが今の内に何とかしようとする側と、それに抗う側。
何だかそれぞれ、言ってる事ややってる事が正しいような、矛盾してるような…?
極端な話、この二人が和解して協力し合えばいい事。壮大な身内の争い。
そう考えると、世界の命運が懸かっているのに、ちょっとしょぼい。
お陰で神話モチーフの魅力もだいぶ薄れた。神話ファンタジーと言うよりただCG満載のバトル・アクション。
コスモをフォースに置き換えれば、『SW』を意識したような作りも…。
全くのオリジナル無視ではなく、リスペクトも感じるが、コレジャナイ感も…。
アクションは見応えあり。
各々身体を張ったバトルもいいが、星矢の師匠=マリンのキレのある動きに感嘆させられた。他のキャストはプロフィールが載ってるのにマリン役の人は載っておらず、何とか調べたら、スタントやってる人なのね。どうりで! レイ・パークが『SW』や『X‐MEN』でメインキャストに抜擢されたみたいな。
マーク・ダカスコスも存在感光ってたね。終盤のアクション・シーンなんて、場をさらっちゃった。
ショーン・ビーンとファムケ・ヤンセンが引き締めてくれる。そういやこの二人、『007/ゴールデンアイ』コンビだね。
シエナ役のマディソン・アイズマンはオリジナルとはかなり印象違うけど、美少女っぷりは発揮。あの絶叫シーンは凄みあった。髪の色も段々紫に…。
周りに押されて主役は影薄く…なんて事ない! 我らが真剣佑も奮闘していた。
日本発祥の作品とは言え、アメリカでは全く無名の日本の若い役者が、これだけの規模のハリウッド大作で主演を張るなんて凄い事!
自らオーディションで掴んだチャンス。亡き父親はハリウッドでも有名だが、真剣佑自身は『パシフィック・リム:アップライジング』でハリウッドデビューしているが、あんな背景みたいな役回り。本当に真の意味で、ハリウッド挑戦!
監督が星矢役には日本人をとこだわり、ハリウッドの多様化もあって、色々奇跡やチャンスが重なって、まさに千載一遇。
演技も決してド下手ではなくハリウッド俳優らと渡り合い、何よりアクション! ついでに鍛え抜かれた裸体もサービス。
本作が成功するか失敗するかまだ分からないが、これからの足掛かりになったのは事実。
『聖闘士星矢』のハリウッド実写化より、日本人俳優がハリウッド大作で主演を張る…この点が一番気になっていたかもしれない。
(我が町の映画館では吹替でしか上映しておらず、本人による吹替はちょっとアレだったけど…)
アメリカより先に日本で公開始まったばかり。
大人気作品故、賛否は必至。すでに色々言われている。
例えば、“聖衣(=クロス)”。アニメを完全再現と言うより、実際の甲冑をベースにしたらしいのだが、クロスのデザインはアニメの方がカッコいいかな…。
アニメ主題歌『ペガサス幻想』がアレンジして使用され、ファンは歓喜モノだが、私個人的にはあまり聞き馴染み無く、気付かんかった…。尚、劇中曲は『相棒』で知られる池頼広。ちゅー事は、この人もハリウッドデビュー!
“Beginning”というサブタイトル通り、本当に話は始まったばかり。他の聖闘士も出てないし。
追々登場するのか…? シリーズ化する気満々。果たして目論見通りヒットして作られるのか…?
“Beginning”が“END”にもなりそうな…。これなら映画よりドラマシリーズで長期でやっていった方が良かったかもしれない…。
つまらなくはなかったけど、何か物足りなさも…。
コスモを燃やし続けられるか…?