「人間の本質について問う作品だが、一般受けするにはやや難しいかもしれない。」ナイトメア・アリー あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の本質について問う作品だが、一般受けするにはやや難しいかもしれない。
なかなかよかった。
ギレルモ・デル・トロ監督作品だが超常現象やクリーチャーが登場しない。
ジャンルとしてはネオ・ノワール映画になるそうだ。
1945年~1960年ごろに流行したフィルム・ノワールの復興を目指したものだという。
物語としては、
流れ者のスタン・カーライルが、場末の見世物小屋に転がり込む。
獣人と呼ばれる人間のなれの果てのような人物が鶏を食べるのを見せたりするような場所だ。そんな場所だが、スタンは仕事を得て、ピートという男からコールド・リーディングを習ったりしていた。そのとき、コールドリーディングを使い続けると、正常な判断力を失い、自分が失敗していることもわからなくなるから、使ってはいけないと釘を刺される。
やがて、見世物小屋で働いていたモリーという若い女性とともに旅立つ。
高級ホテルでショウをするようになったものの、成り行きでコールドリーディングを使用して、霊と話をするふりをすることになる。それが真に迫っていたため、富裕層相手の個人的なセッションを依頼されるようになる。
しかし、それは破滅のはじまりだった。
といったもの。
ある意味「ゆきてかえりし物語」のプロットを使っている。
前半で手品のやりかたを学んで、後半ではそれを使って人をだます。
自分が望んでいた華やかな生活を手に入れる。
しかし、逆にそのネタを次々にバラされていき、最後は自分の本質に向き合うことになる。
この流れがうまい。
また、フィルムノワール的な雰囲気というのもよく出ている。
とくに主演のブラッドリー・クーパーと、精神科医役のケイト・ブランシェットなどは本当にハンフリー・ボガードの映画に出てきそうな演技をしている。
製作費は90億円
興行収入は59億円。
ちなみにアカデミー賞で作品賞等を受賞した「シェイプ・オブ・ウォーター」は20億円ほどの製作費だった。
本作のほうが製作費が高いわけだが、興行収入も含めて、やや地味な印象だ。
それはネオ・ノワールというジャンルが華やかなものではないし、ストーリー的にも暗いからかもしれない。
それでも、映像を含めてとてもよくできた映画だと思うし、クリーチャーなしのデル・トロ作品というのもいいものだなと思った。