劇場公開日 2022年3月25日

「巨匠デル・トロが描く心の闇と運命の螺旋」ナイトメア・アリー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5巨匠デル・トロが描く心の闇と運命の螺旋

2022年3月30日
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人間の心というものを実に艶かしく幻想的に描いた作品だ。秘密を抱えた男が怪しげなカーニバルの一団に身を隠す。このマトリョーシカのような二重構造によって、主人公は一方で俗世から守られつつも、他方では抜け出すことのできない迷宮に囚われていくかのよう。かと思えば、本作は醜く禍々しい存在であるほど親しみと安らぎをもたらし、ノーマルに見えるものほど異常性をむき出しにするという、極めてデル・トロらしいモチーフも見え隠れする。そこでフィーチャーされる”読心術”という要素がまた面白い。誰もが人の心を知りたい、読み解きたいと願うもの。でもひとたびその安易な麻薬を手に入れると、うっかり人生を転がり落ちてしまいかねない。さらにそこへケイト・ブランシェット演じるファムファタールの司る精神分析という闇までもが口を開けて待つ。この心をめぐる攻防のなんとも魅惑的なこと。いつも以上にデル・トロの語り口と人間描写を堪能した。

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牛津厚信