「【"私達は間違ってはいなかった・・。"日韓の女性の20年に亘るお互いへの想いを、静謐で叙情的なトーンで描き出した作品。小樽の雪降る街の夜景の美しさも、作品に趣を与えている作品でもある。】」ユンヒへ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"私達は間違ってはいなかった・・。"日韓の女性の20年に亘るお互いへの想いを、静謐で叙情的なトーンで描き出した作品。小樽の雪降る街の夜景の美しさも、作品に趣を与えている作品でもある。】
- 今作品は岩井俊二監督の「Love Letter」に着想を得たとあるが、作品設定及び漂う静謐な気品、哀しき叙情性など、成る程と思わせるシーンが多数ある。ー
◆感想
・遥か昔、韓国で過ごしていたユンヒ(キム・ヒエ)と今は小樽に住むジュン(中村優子)との関係性が徐々に明らかになる過程の描き方の巧さに、魅入られる。
- 敢えて、昔の彼女達の関係を描いていないのも良い。ー
・ジュンが、何度もユンヒに対して書いていた手紙。けれども、投函できない手紙。
ある日、叔母(木野花)は、その手紙を見つけ、雪の降る中、ポストに投函する。
- ジュンが独身を貫いていた理由も、仄かに分かる。-
・ユンヒの娘セボムが別れた夫(ユ・ジョンミ)に聞いた言葉。
”お父さん、何でお母さんと別れたの・・””お母さんと居ると寂しくなるんだよ。・・”
- 自分を愛していない女性との結婚生活は、辛いよなあ。
この夫の健気な姿にも男としてはグッとくる。
そして、後半ずっと元夫に辛く当たっていたユンヒが、彼から他の女性と結婚すると言われ、 静に微笑む姿。-
・セボムが、ジュンの手紙を盗み見したシーン。
- 日々閉塞感を感じながら生きている母親の姿を見て、決断した小樽への旅。
優しき娘であり、優しきセボムのボーイフレンドの姿。-
・ユンヒとジュンは同じ町、小樽に居るのにナカナカ会えない。
嫌、ユンヒは自らの意思で会わない・・。
・動物病院を営むジュンのかかりつけの女性(瀧内公美:個人的に嬉しい。)と、ジュンとの関係性。
- 勝手に、あの女性はジュンの事が好きなんだろうなあ、と思いながら鑑賞。ジュンが彼女に言った言葉。
”隠したいことは、最後まで隠した方が良い。私は、韓国に居た事を隠して生きているから・・。”-
・だが、セボムは迷う母の姿を見て一計を案じる。
- 雪舞う中、ユンヒとジュンが小樽の運河に掛かる橋上での出逢いのシーンは白眉である。
涙を流して、且つて愛した人を見つめる二人。ー
<そして、韓国に戻ったユンヒが、新しき一歩を踏み出す姿。
その姿をセボムとボーイフレンドは優しく見つめる。
面接を受ける料理店の前で、”緊張してる?”と母に聞きながら、セボムが撮影した母の写真。
そこには、小樽では一枚も撮影出来なかった、笑顔の母親の顔が有った・・。
雪降る街をメイン舞台にした二人の女性と、彼女達と関係を持つ人々の姿を叙情性溢れるトーンで作り上げた作品である。>