「ちょっと期待しすぎたのかも?」劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編 TAKEさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっと期待しすぎたのかも?
原作者書き下ろしというのは、原作からの読者、ファンからしたら原作とかなり密接につながっていたり、アニメ化されていないキャラクターの先行登場だったり、まだ原作未回収ネタがあったりと心や胸を熱くさせることだろうと思う。
ボクは小説ではなくアニメ派でネタバレを回避しているのですべて把握しているわけではないが、今回は劇場版という割には話の内容に物足りなさを感じました。
作中の主人公リムルは魔王になったのだから無双するのも問題をあっという間に解決するのは仕方がない、むしろラファエルもあり魔王になり最強なのだからもっと気持ちいいくらいに暴れさせて活躍してほしかった。でも後半は事件の首謀者だけとカーチェイス(トロッコと狼だが)をし、倒した後はヒイロもトワも助けられずただ見ているしかできなかったのは主人公の扱いとしては少し不憫な気がする。
あと今回初登場にして重要なキャラクターのヒイロの扱いも少しひどい。兄弟分のオーガたちとの再会したのもオークへの恨みもゲルドへの対応もヒイロの性格や想いを見せる演出としてはわかりやすくてよかった。大切な人のために周りが見えなくなるのも熱いキャラと思えばいい。とはいえあんな怪しいキャラの言葉を鵜呑みにして怪しげな丸薬を躊躇なく口に入れたり、城の人たちに断りなく衰弱した一国の姫を変な場所まで連れて行ったり、事情を知らない大臣、宰相や民の今後の反応を考えず自分の肉体にトワを入れようとする、などなど早急を通り越してもはや単純なおバカキャラである。騙された者が悪いなどという詐欺師の言葉など使わないが、それでももう少し思慮を深める必要があったのではないか?あと冒頭回想シーンが少し長かったかな?タイトルは一瞬だったのに。。。
そして今作の悪役も魅力不足だと思いました。ラキュアは、活躍が最初から最後まで小物で、映画の悪役になるのは荷が重すぎたのでしょう。でも木村昴さんのイラッとする演技のおかげでキャラが立っていた気がする。まあ本当に声優さんにだけ恵まれたキャラと言える。声優といえば、トワはとてもかわいいキャラだったのに福本莉子さんの演技力がちょっと残念なレベル。もっと勉強してきてください。
ヴィオラというディアブロ以外の原初の悪魔が登場したため、そこは盛り上がらないはずがなく、胸躍らせました。結局今作の敵にあたるのはラキュアというのは単なる小物だったし、その小物の黒幕かと思ったらただの関係者というだけで大きな陰謀を企ててはいない。それどころかちゃんと律儀にデメリット、そして代償を説明もしていたし、不備があればアフターケアもちゃんと粋な計らいでカバーをする大物悪魔であり、今作だけのキャラ出ないこと願うくらいだ。
むしろ諸悪の根源はこの物語のヒロイン トワの先祖である。国を守るために助けを求めた相手を悪魔と天使と間違ったり助けを求めるのもまだいい。それほど国は困窮していたのだから。しかし一時の利益のためにまだ生んでもいない、もしくは腹を痛めて生んだ我が子や孫が呪いで蝕まれる未来を「私の子孫も同じことを考え、行うでしょう」と根拠のないことを言って呪いがかかっていることやデメリットを知ってて魔力のこもったティアラを受け取り、国のために使うなんてなんと自分勝手なことか。あまつさえ渡した相手がちゃんと伝えた注意事項を子孫や後世になにも記述や警告、注意事項や謝罪文も残さず、しかもこれは数十年~数百年前のことのため、それほど歴史的に古くなくむしろ歴史上新しい部類である。それなのに女神に渡されたなどとあいまいなことしか伝えていないことをみるといかにあとのことを考えずずさんだったかがうかがい知れる。女王なら後世のことも考えて行動するべきだった。
あとレギュラー、準レギュラーキャラの扱いも中盤以降雑だった。もっとテンペストをたくさん大スクリーンで見たかったのにリグルもリグルドも一瞬だけ。しかもボロボロな姿。その原因であるヴェルドラもミリムも活躍することなくただ漫画を読む、留守番ができなくてお仕置きを食らうくらいしか描かれておらず、援護に向かった仲間たちの戦闘もあっさりしすぎて、「え?もう終わり?」と肩透かしだった。もっと大スクリーンなのだから一瞬で倒すにしてもランガのように派手に決めてほしかった。不遇なのはディアブロだけでいいです。
しかし、転生したらスライムだった件というなろう系、俺TUEEという言葉を生んだ元祖のような作品だけあって期待しすぎたのも事実。一つのオリジナルストーリー作品としてみればとても見やすい作品でした。
よく言えば見やすい、悪く言えば王道。未読初見の人には頭を空っぽにしてみることを進め、目の肥えた批評家にはあまりおすすめできない作品だと思いました。