「エンド・オブ・コップショップ。 ジェラバト兄貴が大活躍する系映画かと思ったのに……。」炎のデス・ポリス たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
エンド・オブ・コップショップ。 ジェラバト兄貴が大活躍する系映画かと思ったのに……。
ネバダ州の警察署を舞台に繰り広げられる、警官と詐欺師、そして殺し屋の三つ巴の戦いを描いたノワール・アクション。
凄腕の殺し屋、ボブ・ヴィディックを演じるのは『ヒックとドラゴン』シリーズや『エンド・オブ』シリーズのジェラルド・バトラー。バトラーは本作の製作も務めている。
ほぼ警察署内でのみ物語が進行するワンシチュエーションもの。覚悟ガンギマリな女警官と、挙動不審なニセジョニー・デップ、ジョーカーの二番煎じ的サイコパス、そして我らがベア系俳優ジェラバト兄貴が死闘を繰り広げる、話だけ聞くとめちゃくちゃ面白そうなトリガーハッピー映画なのだが…。
まず気を付けたいのは、この映画ジェラルド・バトラーの主演作じゃないという事。ポスターにデカデカと写っているし、キャスト欄の1番上に名前が記載されてもいるのだが、はっきり言って脇役。ジョニー・デップの『トランセンデンス』(2014)やスタローンの『エクスペンダブルズ ニューブラッド』(2023)に代表される“スター詐欺系映画“に属する一本である。その為、『300〈スリーハンドレッド〉』(2007)や『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013)の様なジェラバト兄貴無双を期待していると「おまっ、基本的に座ってるだけじゃねーかっ!!」とツッコミたくなってしまう。
今作の兄貴は要所要所でとっても良い演技をしているだけに、この出番の少なさにはガッカリせざるを得ない。製作費は4,300万ドルだったという事だが、その予算の内ではこのくらいの出演が限界だったのだろう。それでもこの映画に掛かった予算のほとんどはジェラバトのギャラだったと思うんだけどね。金貰ってんだからもっとしっかり動けっ!!
ワンシチュエーションで描かれるのは、法の番人と無法者によるガンファイト。往年の西部劇を彷彿とさせる内容でありながら、主人公に女性黒人警官を配しているところに現代的なアップデートが感じられる。注目したいのは主演のアレクシス・ラウダーの肉体や佇まい。正に西部劇のガンマンといったオーラを纏っており、その見事な演技で彼女の起用がただの人種的配慮ではないのだという事を証明してみせている。引き締まった痩身の女性が44口径のどデカいシングルアクションリボルバーを構えるとめちゃくちゃバエるのよね〜💥🔫
早撃ちが勝負を決する分かりやすいガンアクションなど、心くすぐる命のやり取りに燃えはするのだが、ワンシチュエーションで107分はちょっと長い。実際に映画が動き出すのはアンソニーが署に殴り込みをかけてからであり、それまでに50分も時間がかかるというのはあまりにスロースターターすぎる。もっとタイトに物語を詰めれば、余裕で90分以内に収められたと思うのだが。
また、ストーリーにツイストを加えようと思いすぎた為か、身の丈に不相応な複雑さを備えている様な印象を受けた。結局テディがどんな人物だったのかちゃんと説明できる人っていないんじゃない?
そして、メインヴァランであるアンソニー。こいつがダサいっ!見た目とかじゃなくキャラ造詣がダサいっ!ようこんな絵に描いたようなサイコパスを映画に出そうと思ったな💦恥ずかしくってまともに直視出来んぞ。こんなん出さずに、もっとシンプルにボブをヴィランにしてしまえば良かったのにね。そうすりゃジェラバトの殺戮ショーという観客が一番観たいもんを描けたのに。まぁそれもギャラの関係っすかね。
やり様によってはめっちゃ面白くなりそうだったのに、なんとも勿体ない印象を受けた作品だった。下手にスターを使って釣ろうなどとはせず、もっと誠実な映画作りに励んでほしい。
ちなみに、『炎のデス・ポリス』というタイトルは完全なオリジナル邦題であるが、全く映画の内容とマッチしていない。正確には『火器でポリスがデス』であろう。…そんなタイトルで客が入るわけないけど。
