「雰囲気が湿っぽいけれど、そんなに悪くない」よだかの片想い つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
雰囲気が湿っぽいけれど、そんなに悪くない
人間は複雑だ。相反する想いを抱えることもある。主人公アイコにとってそれは、見られたいという想いと見られると恥ずかしいという想いだ。
過去のエピソードから、アイコがなぜそうなったのかを紡ぐ物語は実に丁寧だ。
言い換えるならば、アイコというキャラクターのみに当てはまる特別さを構築しようとしている。
逆にいえば、アイコの気持ちに普遍性が少ないので、本当の意味で彼女を理解するのが難しくなる。
それが悪いわけではない。極端な話、物語とは多くの人に当てはまる普遍的なものか、オンリーワンのキャラクターを紡ぐか、の二通りしかないのだから。
しかし振り返ってみると、ついつい顔のアザのことに触れがちだが、別にアザなんてなくともこの物語が成立してしまうことに気付く。
つまり、容姿に多少のコンプレックスを抱いている人全てに当てはまる普遍性を有しているともとれるわけだ。
で、結局何が言いたいかというと、人間は一人一人考えていることは違うのだから相手の気持ちを完全に理解するのは難しいということだ。それが異性ともなれば、ほとんど何も分からないと言ってもいい。
自分の判断で相手の気持ちを決めつけ、間違った寄り添い方をしてしまう。
逆に、多くの人が「失言」だと思ったとしても、言われた本人にとっては嬉しい言葉かもしれない。
そして、仮に嬉しい言葉を言われたからといっても、その人が自分を理解しているとは限らないのだ。
やはりアザのことに目がいきがちだが、結局は、男と女のすれ違いに関する普通の恋愛映画だったように思える。
ものすごく面白いわけではないし、少々湿っぽい雰囲気であるが、作品としては悪くない。
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