劇場公開日 2021年12月24日

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「組織のために身を粉にして働く全ての人の魂を浄化する突き抜けたヴァイオレンスに貫かれた大傑作」レイジング・ファイア よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0組織のために身を粉にして働く全ての人の魂を浄化する突き抜けたヴァイオレンスに貫かれた大傑作

2021年12月30日
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鑑賞方法:映画館

東九龍警察本部のボンは数々の大事件を解決した凄腕の警部だが、部下からの絶大な信頼を集めるがその頑なな正義感ゆえに上司に疎まれ出世の機会に恵まれずにいた。大企業の御曹司が起こした交通事故の揉み消しも毅然として断ったことから凶悪犯ウォン・クワンとベトナムマフィアとの麻薬取引現場を急襲する作戦への参加を妨害されたボンは何とか現場を割り出して急行するが、そこは何者かによって襲撃され覚醒剤が強奪されていた。友人のイウ警部を殺され執念を燃やすボンの捜査線上に浮かんだのは密売組織のボス、マンクワイ。ウォンの覚醒剤を強奪してマンクワイに流したのはンゴウ率いるグループ。彼らはボンの元部下で、ボンとンゴウ達の間には断ちがたい確執があった。

香港映画の底力を見せつけられるような圧倒的な作品。ボンを演じるドニー・イェンとマンクワイを演じるベン・ラムとの戦いは名作『ドラゴン危機一発’97』での死闘を彷彿させる壮絶な一騎討ちですが、それすら名刺交換程度しか見えないほど壮絶なヴァイオレンスがパンパンに詰まっています。もちろんメインディッシュはドニーとンゴウ演じるニコラス・ツェーの激突。そこに至るまでのドラマをグツグツに煮込む演出がバカみたいに分厚い。ンゴウは自身の正義感を上層部に利用されて道を踏み外し、ボンはその正義感ゆえにンゴウを救えない。凄惨な過去を時折振り返りながら対峙する市街戦からのクライマックスはあからさまにも程がある『ヒート』リスペクトに満ちていますが、盛大に通行人を巻き込んで暴走していく凶悪さはほぼ怪獣映画。壮絶な殺し合いの果てに辿り着く終幕に被さるニコラス・ツェーが歌う主題歌の訳詞を呆然と見送っていると本作が組織のために身を粉にして働く全ての人に捧げられたレクイエムにも見えました。

本作はベニー・チャン監督の遺作。『レクイエム 最後の銃弾』、『香港国際警察/ NEW POLICE STORY』、『コネクテッド』といった骨太のフィルモグラフィの最後に本作のような傑作が加わったことに感無量です。

ほとんど見所しかない作品ですが、さりげなく登場したサイモン・ヤムが物凄く痺れるセリフを添えるカットに往年の香港映画ファンは溜息をつくことでしょう、血塗れで凄惨なのに壮絶に爽快なヴァイオレンスが楔のように胸に打ち込まれて客電が点いても暫く立ち上がれませんでした。圧倒的な存在感を放った大傑作です。

よね