「企画倒れのまだマシに観れる方」僕が愛したすべての君へ ヨヨ23さんの映画レビュー(感想・評価)
企画倒れのまだマシに観れる方
公開日に2作連続で見てきました。
大分県民です。
ついでに原作の小説2作+外伝1作の既読組です。
それでも言います。なぜこっちでNTRを匂わせるような胸糞展開にしてしまったんだ。
まず原作小説2作品についてですが、これらは肉じゃかとカレーのように「具材はだいたい同じでも別物の料理」と言えるほどに違いのある物語でした。
原作小説「僕愛(青表紙とポニテ少女)」はハッピーエンド。
原作小説「君愛(赤表紙とワンピ少女)」はバットエンド。
そしてどちらを「最後に読むか」で読書後の感想が違ってくるというものです。
ポケモンのマグマ団とアクア団のようなVer違いではなく、ピカチュウとニャース、サトシ達とロケット団くらい視点が違っているストーリー軸で描かれていたものです。
「僕愛」のヒロインは瀧川和音。主人公の高崎暦との恋愛関係を描いたSF物です。
もう一方の「君愛」のワンピース少女の影も見えますが、こちらはストーリーには直接関与しない、いわゆる「匂わせ」程度のものの「ハズでした」。
本作映画。
「僕愛(青表紙とポニテ少女)」は主人公だけハッピーエンド。
「君愛(赤表紙とワンピ少女)」はモヤットエンド。
本来であれば……とういうか原作では、世界線が頻繁に変わる中で主人公と彼女の同一性について悩みながら恋したり告白したりという恋愛模様が進むといったストーリーでした。
なまじ「自分が今いる世界とどれだけ異なる存在なのか」がIP端末(シュタゲでいうダイバージェンスメーターの個人版)で数値としてわかる為、「1ズレた世界の彼女は元の世界の彼女と同じ人なのか?」「10世界がズレていたら?」「0.1世界がズレているだけでも別人では?」という哲学的な悩みと進む物語でした。
映画本作、ほぼほぼ悩みません。
数値のズレに愕然とする描写もちょっとありますが、ほぼほぼ悩みません。
裏テーマとしてSF要素と密接に関係して進む物語なのに。ほぼほぼ悩みません。
でも恋愛映画としてシンプルにまとまっているのかといえばそんなことはありません。
四コマ漫画のような出来事が描写されているだけで、「雑」に進行するだけ。
下手に脚本を削ったが故に説明不足が目立ちます。
恋愛映画としてマトモなのはSF要素がほぼほぼ絡まない最初の十数分だけ。
ただただ原作小説の恋愛所を局所的に映像化した。そんな感じです。
極めつけは中盤以降(壮年期)に起こるとある事件。
原作は正月の神社参拝で起きた事件が、なぜか映画では謎のSFフェスに。なぜ変えた?
そして(ネタバレ防止の為にぼやかしますが)和音だけが悪者になっていて、主人公の暦はほとんど悩んでいないという……
じゃあ削った脚本の上映時間分はどこ行ったの?と言えば……おそらく後半の「君愛」の劇中シーン部分でしょう。
「僕愛」なのに「君愛」のシーンが流れます。それもがっつり。
「君愛」でもレビューに書きましたが、「え? 制作予算尽きてもう一方の作品のシーンでお茶を濁した?」と本気で手抜きを疑いましたよ。
電通さん、この制作予算を削って宣伝費に回したとか……やってないですよね?
もう一方の「君愛」のレビューにも書きましたが、これらの2作は初めから「企画を楽しむ事」を前提として作られていると感じます。
企画だから映画の中身はどうでもいい。2作品をリンクさせる策として、思い付きで雑なことをしたらこんな作品になった。そんな印象を受けました。
当然、こっちでも普通にノイズが増えて混乱してややこしくなっただけです。回想効果以前に、ただ上映時間の水増しにしかなっていない。
普通に一本の独立した映画として作ってくれていた方がまだ楽しめていたと思います。完全に逆効果でしょう。
ついでに「僕愛」と「君愛」で技術水準がかなり異なっていることが明確になっていてツッコミどころにしかなっていません。
違う世界と強調したかったのかもしれませんが、雑。もっと他にできる演出あったでしょ。
なにより、下手にワンピ少女を登場させたことでNTR要素も加わっています。
和音のパラレルシフトも同様。中盤の事件とごっちゃになって混乱します。
企画を優先し、「君愛」とのリンクの為に原作改変したことで、はっきりと「改悪」と言えるものとなっています。
主人公の暦お爺ちゃんだけなんかいい感じに終わって、和音お婆ちゃんが報われてない。素直にみんなハッピーエンドでよかったのに。
まさかプロデューサーの人が脚本を振り回したとか……やってないですよね?
2作品の考察以前に、映画を終始見る事自体が苦痛なくらいです。
この映画2作をまとめても、原作小説の片方単品の満足度に負けてしまいます。
はっきり言います。どちらか片方一本観て嫌な予感を感じたら、もう一本は観なくていい。
完全なる企画倒れです。