「甘いお菓子の様な作品」機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 赤福餅さんの映画レビュー(感想・評価)
甘いお菓子の様な作品
良くも悪くも、安彦先生の作品でした。
THE ORIGINの補完をされようとなさったのでしょうが、「アリオン」や「ヴィナス戦記」からさほど変化はしていないように感じました。(クラッシャージョウは高千穂先生の原作がありますので、ちょっと雰囲気が異なります)
ずっと漫画家として活動されてこられたので、歴史的な流れの考察から生み出された人物設定などは見事だと思いました。世界観よりも、そこに存在する人物を中心として物語が紡がれているような気がしました。例えばWBクルーが特に何もしていなくても、視聴者が勝手にストーリーや世界観を構築してしまうのです。なのでドアンが何をしていようと裏は無く、本人が語っているそれ以上でもそれ以下でもありません。これは安彦先生の各漫画でも似たような傾向があります。今回は設定がガンダムなので、一層視聴者に想像を委ねられています。現に赤いザクが一瞬画面に出た際、多くの観客が「シャアが出た」とその背景まで想像できるのですから。(ガンダム初見の方にしてみれば何の事だかわかりません)
ストーリーが淡々としているように感じるのは、安彦先生お得意の『ボーイミーツガール』が入っていなかったからだと思います。
カーラがその役を担ってもよかったのでしょうが、カーラの気持ちはドアンや子供たちに向いていて、何も進展しませんでした。アムロがもっと子供たちになつかれていれば少しは流れが変わったのかなと思いました。
が、ラストで『カツ・レツ・キッカ・ハロ』がアムロを迎えにくる事で、ドアンと同じように「自分にも守る人達がいるんだ」という心の成長が生まれます。これでドアンに引け目を感じずに堂々と生きて行こうという覚悟が出来たのだと思います。
これはガンダム最終話のアムロがア・バオア・クーからの脱出の際に子供たち3人がアムロを導くという事の伏線をを張られたのではないでしょうか。
ともかくアニメ映画には必ずと言っていいほど、視聴前の予備知識が必要です。あまり細かい事にこだわらず、素直に楽しめばいいのではないでしょうか。
それでも気になった点は、
・ザクの喉元にナイフを当てて脅しをかける必要性があるのか。普通ならコクピットを狙う。見た目には絵になりますが。
・巷で言われている「ガンダムのビームサーベル2刀持ちはス
ゲェ」はTV版ガンダムでもすでにやっている(対ギャン戦などで)
・ククルスドアンのヒットを脇に見つつ、富野由悠季監督は『Gのレコンキスタ』をガンガン創られていらっしゃるので、そちらにもっとスポットライトを当ててほしい。
という事です。