劇場公開日 2022年6月3日

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「素晴らしいアニメであったと思います ガンダムの映画ならこれ、といつか時を超えて名作と呼ばれる作品になるのだろうと思います 強くお勧め致します」機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0素晴らしいアニメであったと思います ガンダムの映画ならこれ、といつか時を超えて名作と呼ばれる作品になるのだろうと思います 強くお勧め致します

2022年6月3日
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鑑賞方法:映画館

大満足しました!
機動戦士ガンダム第15話は1979年7月14日の放送だったそうです
あれから43年
作画崩壊した回として有名でした

箸休め的なエピソードの回ですから、それで映画になるのかな?
それとも独立したエピソードだから逆に映画にしやすいのかな?
どちらにしてもかなり改変されてお話が膨らむんだろうなと予想していました

お話を膨らましてあるのは確かです
でも関係ないエピソード混ぜこんだというものではなく、お話の背景を掘り下げたというべきものです
そこに重点はなく、ククルスドアンの島で数日をアムロが子供達と過ごす日常にこそ焦点が当たっています

子供達のキャラクターは生き生きとして描き分けられていて、動きや表情も本当にかってのアニメを観ている懐かしい気持ちになります

ファーストガンダムの様々なエピソードのモチーフや登場人物が時系列を多少前後してもうまくはめ込みされていて違和感が全くありません

CGも駆使されて、質感や細部までの書き込み
解像度が数段上がったかのような感覚です
それが映像だけでなく、43年経って作り手側も観る側も成長して内容についての考察がより深くなっています
それを反映してガンダムの物語の内容自体の解像度が上がったという印象を受けました

ククルスドアン本人その人にも掘り下げがあり、彼の原隊、その同僚達、もしかしたら恋人も登場します
どうやら彼は原隊の仲間にさえ、脱走したと思わせて秘密の特別任務に就いていたという設定になっています
それが残置諜者という存在です
ジオン軍の方面司令部ですら存在を知らないのです
知っているのは、オデッサにいるマ・クベとかれの幕僚だけのようです
その残置諜者の任務とは?
それは極秘に建設された核ミサイル基地の維持管理と警固だったのです
しかし結局のところ戦争孤児の子供達の面倒を観ているうちに、その任務自体を放棄して核ミサイル自体を機能しないように細工することが仕事になってしまうのです

恐ろしいことに気がつきました
劇中では触れられていませんが、言外に気づくようになっています
それはあの孤児の子供達はどこからきたのか?です
あの島は絶海の孤島です
元からいた島民か、核ミサイル基地建設に従事した人々の子供達に違いありません
余所から子供達がくる手段も、ドアンが連れてくる動機もないのです
元からいたのです
では子供達の両親はどこにいったのか?
住んでいたであろう住居は?
小さい村があったはずです
キレイさっぱりなくなっているのです
子供達を残して
両親達は子供達を防空壕に避難させたのか、安全なところに隠したに違いないのです
そして村ごと消えさった
ドアンは残置諜者として配置について、子供達を発見して保護したとき何が起こったかに察しがついたのでしょう
だから彼は核ミサイルを無効化しようと決意したのだと思うのです

マ・クベも大佐ではなく、漫画版ORIGINでの設定のジオン軍地球侵攻軍総司令・中将になっています
但し展開は漫画版とは真逆です

パリは燃えているか?の談義は、ヒトラーの実話
詳しくは1966年の映画「パリは燃えているか」をご覧になってください

今現在進行形のウクライナの戦争と不思議なシンクロが本作にはあります

ウクライナ戦争で孤児となった子供達
学校で射撃訓練をうける中学生達
戦争に介入するなら核攻撃も辞さないというロシアの指導者
実際に核兵器を見えるように搭載して、バルト海の真ん中で他国の領空を侵犯して飛行する戦闘爆撃機の映像
精密に着弾するミサイルや砲弾に撃破され激しく炎上して赤く残骸をさらす無数の装甲車両

どれもこれも現実の戦争の光景が本作とシンクロするのです

レビル将軍はベルファーストを根拠地にしてバルト海に入り、ダンチヒに上陸
そこからポーランド平原を南下してオデッサを衝くという戦略構想を示します
彼の背後のディスプレイには、もう目に焼き付いたウクライナを中心にした欧州の地図が示されるのです

劇中ではオデッサのまま、オデーサとは発音されません

戦争が現実となった世界
アニメの中の未来の戦争ではあるけれど、戦争のもたらすこと
国家と国家のむき出しの暴力のぶつかり合いの中で、幼い子供達のようなか弱い存在を守ることの意味
核兵器の使用命令に、軍人といえど何も考えずに従えるものがどれだけいるのか

様々なことを考えさせられます
本作を観て、ウクライナのことに思いを馳せる
そして自分のこととして考える
そのように製作されていると思います
素晴らしいアニメであったと思います

ファーストガンダムの中盤のエッセンスと雰囲気を濃縮したような作品です
テレビシリーズの内容を詳しく知るファンほど、このモチーフはどこから持ってきたものか分かるだけに一層楽しめるはずです

ガンダムの映画ならこれ、といつか時を超えて名作と呼ばれる作品になるのだろうと思います
強くお勧め致します

あき240