「この現実を知るべき」チェチェンへようこそ ゲイの粛清 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
この現実を知るべき
大変にショッキングな内容のドキュメンタリーだが、これが今の現実だ。チェチェンでは政府主導のゲイ狩りが行われており、多くの性的少数者が命の危険にさらされている。本作は、ロシアLGBTネットワークがチェチェンから人々を脱出させる活動にカメラを持って同行し、その一部始終を収めている。チェチェンから脱出をはかる人々は顔をAI技術で加工されて正体を隠している。一般的に考えれば、これはドキュメンタリーとしては臨場感を損なうマイナス要因だが、彼ら・彼女らはそのようにしてチェチェンで隠れて生きているということの比喩ともなり、命を守ると同時に、映画的な効果も高い。告発を決めた人だけがその加工を外されていくシーンがあるが、顔をさらして生きていくということの覚悟と勇気がそのシーンには表れている。
ロシアLGBTネットワークが入手した暴行シーンや拷問シーンなど、ショッキングな映像もあるので見る時は注意してほしいが、これも世界の今だ。その現実は知っておくべきだと思う。
コメントする