安魂のレビュー・感想・評価
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父さんが好きなのは心の中の僕なんだ。
物語の舞台は開封市。随分歴史がありそうなこの都市を詳しく知らず、帰ってから調べたのだが、中国の八大古都に数えられるほどの古い都市で、夏や魏の首都であった歴史もあり、かつて(11~12世紀)世界最大級の規模を誇っていたほどの都市だった。そうと知れば、父が作家として大成すればそりゃ威厳を持つほどの世間体なのだろうと理解できた。日本にイメージすれば、奈良に住む有名作家(志賀直哉とかも住んでいたし)といったところか。
ところが、その家族にとって、父の名誉は誇りではあったのに、知らず知らず息子の心の枷となってしまっていた。それが、息子の死によって明らかにされ、父の後悔の十字架となってしまう。厳格であっても幸せに見えた家族に訪れた不幸。父の憔悴いかばかりか。母がわりと立ち直りが早かったのは、あまりの父の狼狽えぶりを目にして冷静でいられたからだろう。たしかに父の"あること"へのこだわりは異常に見えた。だけどそれが、父にとってのケジメのつけ方だったのだろうな。
人間の魂の重さは、わずか21gだという。僕はその大きさを想像してしまった。金と同じくらいの比重なら砂利粒ほどもないだろうが、羽毛のような物体ならば、随分と大きいんだろうな、と。それならば、ふわふわっと空に飛んでいけるんだろうな、と。そういう想像自体も、"あること"に執着した父と同じで、他人から見れば滑稽なことなのかも知れない。でも、滑稽にみえることでさえも、当人にとって真剣なことっていくつもある。それは、惨めにもみえるが、健気にもみえる。その姿が"彼"の心を動かしたのだろう。
めちゃ良かった
こんなに深く感動した映画は久しぶりだ。
とても知性的で地位も名誉もある父親が「いいんだ、そんなことどうでもいいんだ」と詐欺師に息子の面影を求める姿に泣ける。
でも感動するのはそこだけにとどまらない。
観たあとは誰かときっと語り合いたくなると思う。
お父さん役の演技も見どころ。
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