麻希のいる世界のレビュー・感想・評価
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オーバースペックな青春映画、走り書きをそのまま落とし込んだような作品
東京フィルメックスの世界初上映にて鑑賞。端的に例えると、オーバースペック。89分では描き切れないほど沢山詰め込まれていて、着地も釈然としなかった。舞台挨拶での話も交えながら記していく。
思い返せば『さよならくちびる』もあまり自分にとってハマっていなかった。ちょっと監督のスタイルが合ってないのかもしれないな…と思いながら観ていた。ちなみに、監督曰く『さよならくちびる』がヒットしたらスピンオフ等をしたかったらしいが、そうでもなかったから…ということでこの形になったそう。うーん、確かに…。
今年は沢山の青春の中の危うさを描く作品が多かっただけに、決定的な違いを覚える。それは、状況に対しての説明や心情がまるで無いのである。音楽映画ではあるのだけど、その中での揺らめきがあまりにも衝動的で唐突。個々のバックグラウンドが強くあるので、そこに囚われすぎてしまっているように思う。
また、凄く硬派ではあるのだけど、咀嚼できるほど優しく見せていないので難しい。劇薬を盛りすぎて、胃もたれしてしまった。監督もオープンエンドで描いたと仰っていたので、フルスロットルで走ったプロットなのはよく分かる。
主人公の二人の眼力が強く、片時も目を離せないのだが、容赦なく突きつけるので疲れた。新谷ゆづみさんの凛とした表情は山田杏奈さんと重ねた。また、日髙麻鈴さんの歌声もディズニープリンセスのような伸びのある歌声で魅力的。さらに、祐介役の窪田愛流さんも初演技ながらオーラを放つ。確かに怒りの感情がワントーンだったのは気になったが、これから伸びしろを感じさせる。
かなり大胆なので見応えはある。その一方で89分では収まりきっていない感情があるように思える。公開されてからの賛否が楽しみだ。
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