ちょっと思い出しただけのレビュー・感想・評価
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久方ぶりの映画。良い時間でした。
50代夫婦で鑑賞しました。エンドロールの中で、夫にも私にもそれぞれの胸に去来した“ちょっと思い出しただけ”がありました。大事な人だからこそ、本当の気持ちを伝えないといけないという事をさり気なく伝えています。主演のお二方、本当に素晴らしかったです。あの役は、伊藤沙莉さんでないと出来ない役だなと思いました。思い出した瞬間の照夫の表情に、すべてが語られている感じがしました。バレンタインデー直前の公開だったのも良かったですね。久方ぶりの映画。良い時間でした。ありがとう。
恋愛映画のような恋〜をしてみませんか
ロマンチックなデートシーン、二人の間で交わされる親密な会話、観ているこちら側が思わずニンマリしてしまう程に、恋に落ちた二人の姿が微笑ましい。
キラキラした瞳の池松壮亮さん(ダンサーを目指した照生)、子猫のように愛くるしい伊藤沙莉さん(タクシー運転手の葉)の魅力に溢れた作品。
居酒屋の外で「オバハン」・「ショーワ」とツッコミを入れながら話しかけてくる男性に、葉が本音でサラリと言葉を返すシーン、三人組のサラリーマン( 渋川清彦さん、いい味出されていました。)と葉との軽妙なやり取り、いいスパイスになっていました。
切なく胸を焦がした恋を、ふと思い出させる、そんな素敵な作品でした。
二十代の皆さん、恋愛映画のような恋をしてみませんか?
映画館での鑑賞
トキメキへの時間旅行
別れてしまった二人が、ある邂逅をきっかけに出会った頃までの記憶を遡っていく。このフォーマットは時間軸がトキメキの方向に向かっていくため、互いに重荷となってしまった愛情のコリが徐々にほぐれていく。照生と葉が、自然な磁力で惹かれ合い始めるあの場所にたどり着くと、不思議な気分が湧き上がってくる。
自分のとっておきの思い出が、照生と葉の時間旅行にシンクロするかのごとく蘇ってきて、二人のラブストーリーと自分のラブストーリーがオーバーラップする。それは、現実とかけ離れたキラキラとした恋物語ではなく、等身大のラブストーリーを個性豊かな俳優陣が彩っているからではないかと思う。
タクシーという空間は、乗客は気が緩むこともあって、素の自分をさらけ出してしまう。その空間に伊藤沙莉がとてもフィットする。独特にハスキーな低い声での会話劇は、飽きることなく見ていられる。
國村隼、永瀬正敏、成田凌など主演級を演じる俳優達が脇を固めているが、自然体で楽しそうに演じている。脚本オリジンのキャスティングで実力が伴った演者が集結した作品は、見ていて気持ちがよい。こういう作品をもっと見たいね。
バランス
ちょっと悲しくてちょっと懐かしくて、現在もそれなりに幸せで嘆くこともないんだろうけど、近くによれば思い出の場所ものぞいてしまうし記念日にはふとケーキなど買ってしまう。やっぱり輝いていた記憶。最近すこし昔を思い出す話が幾つか続くけど、これはこれで良い映画だと思った。凝った構成には要らぬ頭も使ってしまったケド。初対面の夜のアーケードなど幾つか挟まれた長回しもはまっていた。成田凌のシーンは笑えた。河合優実も自然に可愛くて良かった。ニューヨーク屋敷は嫌味がなくて後味が良い。
主役陣、池松壮亮は大人になった。超シリアスな本郷猛に期待。伊藤沙莉は同級生役、変わった友人役からいつのまにか堂々とした主役になり、今作でもますます可愛くなっている。良い声が劇中でも褒められて良い気持ち。
永瀬さんだけ進んでる
タクシードライバーをする葉と舞台の照明のスタッフをする照生2人の恋を徐々に遡りながら描いていく話。
ジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』から尾崎世界観が「ナイト・オン・ザ・プラネット」の曲を作って、さらにその曲から今作が生まれてるので至る所にジャームッシュ要素がちりばめられてて良かった!
まず、葉のタクシーに乗ってくるお客さん達は『ナイト・オン・ザ・プラネット』にも出てくるお客さんを明らかにモチーフにしてる人が沢山いて、酔っ払い3人のおじちゃん達はヘルシンキとパリ(酔っ払いが運転手に怒られる)のミックスだと思うし、明らかにロスのウィノナ・ライダーとジーナ・ロランズな伊藤沙莉と高岡早紀。
告白する時に背中を押してくれるタクシー運転手のおじちゃん、タクシー運転手の葉が運転せずに乗ってるというシュチュエーションと、やたらゆっくりな運転とあの間の抜けたような雰囲気は絶対ニューヨークの移民のタクシー運転手オマージュ。葉と照生だけじゃなくて、タクシーに乗り込んでくる色んな人との絡みもちゃんと描いてくれてたの良かった。
あとは、基本的には同じ日照生の誕生日を1年ずつ遡っていく話だけど、公園のベンチで妻を待ってる永瀬正敏さんだけは時間が進んでいるようにも見える(ずっと奥さんを待ってて、やっと会えたっていう話に見える)仕掛けが私はすごく好きだった。この時間を超越している感じってジム・ジャームッシュっぽいなと思った。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』も同時刻に世界各地で起きていることを描きながらも、陽が沈む時に始まり陽が昇るところで終わってちゃんと時間は進んでる。この映画も過去の同時刻を描いて、毎回家を出る様子しか描かれなかった照生が最後にはちゃんと家に戻ってくる。昔の恋を回顧するというエモにひっぱられそうになるけど、この不思議な時間の旅の雰囲気が良い。
ちょっと思い出す過去は宝物
主役の2人の演技が秀逸。何より2人の声が、もうそれだけでノスタルジー。感情をデフォルメするような発声の間や抑揚に引き込まれてしまい、役者にとって声は武器なんだなと確信した。
東京はキラキラで、エネルギッシュだけど、故に孤独を痛感する街でもあって、葉や照男のように真面目で繊細な若者は、日々葛藤しながら、愛や夢を求めて生きている。そんな不器用な2人の恋愛は、ドキュメンタリーみたいに自然な演技で、終始キュンとした。
タクシーの乗車客には、いろいろな人間模様が垣間見れるように、どの登場人物にも抱えるものが見て取れ、群像劇にも思えた。
また、余計な説明が少なくて、こちらがあれこれ想像できる余白のある映画だった。良質な本や映像作品は、そういうものだよなぁと改めて思った。
最後の場面、葉は、自分の恋愛を昇華して、今の自分や、過去の諸々、そして人生を肯定したのだなと解釈。思い出はやっぱり宝物!
最後にちょっとだけキュンとなった
最近も精力的に作品を発表していた松井監督。のをあまり観てなかったのだけど、随分大人っぽい感じになっていた。なんとなく聞いていたペパーミントキャンディー方式のワンデイといういいとこ取りのような企画、に、芸達者のふたりとくれば悪いものを見せられるはずはない。ただ、そんな組み合わせからするともっと上を期待してしまう。
なかなかエモーションかからず、というのはこの手の遡り映画の常かどうか思い出せないけれど、いくつかあったピースがラストのラストで被って朝焼けを迎えてベランダに立つ伊藤沙莉の、ケーキはあした食べるというあたり、人には心の奥にしまいこんでる大切な大切な思い出があるもんだ的な秘密の笑顔には泣いたりはする。
にしても何度か映る家の前の坂道も朝焼けに帰り道になった時の優雅な切なさというか。
とはいえ、最後の最後までエモーションがかからないのだ。その意味では「あの頃花束のような恋をした明け方の若者たち」の中では少し大人で渋い出来、かな。
日常系。でも見れちゃう
ちょっと本歌取りしただけ
ジャームッシュ感満載の作品と聞いたので予備知識なしに公開初日に鑑賞。
いろんなサイトのレビュー読みましたがあまり触れてない?と思い珍しくレビューしますが、、
「ちょっと思い出した」のは彼女一人だけじゃなくて、実はラストに居合わせた3人全員、なんですよね。
彼女はステージの彼を見て、ミュージシャンは劇場の彼を見て、彼はそのミュージシャンがタクシーに乗り込むのを見て。
3人が3人の6年間を「ちょっと思い出した」ってとこが後で気付いてジンときた。
愛しさと切なさと伊藤沙莉と
松居大悟作品は初めてだったが(福岡では彼のエキセントリックな母親が悪目立ちしていて、彼自身にも色物感を感じていたので)、凄く良いじゃない!今まで食わず嫌いしていて申し訳ない!
とにかく主演の二人が滅茶苦茶良くて、特に会話シーンは、どこまでが台本通りでどこからがアドリブなんだろうと思ってしまう程、自然で軽妙でリアリティが有った。
また、クリープハイプの曲からの『ナイト・オン・ザ・プラネット』でそこからの逆算でヒロインがタクシー運転手という設定なのだろうが、この恋愛映画史上初なのではと思えるヒロインの職種というのが、実は凄い発明なんじゃないかと思った。それによって(その職種を選ぶという事で)葉という女性の為人がなんとなく掴めるし、同じ構図(に成らざるを得ない制約上)でも微妙に違っている(差異を見せられる)というのが、映画の主題にも上手く合致していると思う。
ともあれ、『ブルーバレンタイン』等に連なる〝楽しい過去が描かれる程切なくなって来る映画〟の新たなマスターピースの誕生に今は酔いしれよう!
ちょっと物悲しくて、笑えるいい映画です。
説明のバランス
メメントのラブストーリー版
2022年劇場鑑賞42本目。
最初混乱しますが(うわっ、浮気しておいて何いってんの?みたいな勘違い)「メメント」のように一年ずつ過去に逆上って結果から始まりを描いていくといった趣向になっています。永瀬正敏の役だけもしかしたら時空を超えたファンタジーの存在なのかもしれません。
やっていることは「花束みたいな恋をした」に近いのですが、描き方で斬新な映画になっていると思います。
しかしです。過去と現在を行ったり来たりして描くラブストーリー(最近だと奇しくも同じ池松壮亮主演の宮本から君へがそうでした)はよくあるのに、こういった結末があって遡っていくとただただ切ないんですよね。そこがいいという方がいるのは理解しますが、自分にはただただ辛い時間でした。ちょっと思い出すには結構長い時間でしたよ。
後、映画で喫煙シーンが出てくる時、普通はダークサイドに登場人物が属しているメタファーに使われるのですがこの映画だと自由のメタファーに使われていたのかなと思います。メタファーで普段喫煙しない俳優さんが喫煙されるのは見ていて辛いのですが。
ちょっとどころか・・・
たまには。
タイトルなし(ネタバレ)
個人的大傑作。今までの恋愛映画を過去にする素晴らしい構成と演出、そして主演2人の見事で身近な演技に鳥肌の連続。きっと何度も見返したくなるだろう作品だ。
ジム・ジャームッシュのナイト・オン・ザ・プラネットが土台にある作品だけあって、随所に作品のサンプリングが光る。ウィナノライダー演じるコーキーが女優の誘いを断ってでも整備工になりたいという強い思い、そこからは彼女の自分の人生への強い決意が伺える。それはこの作品のキャラクターにも反映されている。怪我をしてもいつかまた踊りたいと願う池松壮亮。結婚し子どもが産まれてもタクシーを運転し続ける伊藤沙莉。亡くなった妻をベンチで愛し続ける永瀬正敏など挙げればキリがない。変わらない人生や夢、目標、生活。変わったのは2人の関係だけ。その変わってしまったたったの数年間は広い目で見ればほんの少しの煌めきだが、その煌めきがいかに尊いものだったかをこの映画は思い出させてくれる。
当時付き合ってひどい別れ方をしたとして、その時は嫌な思い出として記憶されるが、数年後にそれを記録として思い出してみると、さほど嫌な記憶でもなかったなぁ、あの人がいたから今の自分がいたんだなぁ、と淡く光出す。人生の中で良い悪い問わず積み重ね続けた思い出は、きっと今の自分の背中を押してくれる。そんな強く前向きなメッセージをこの映画から受け取れた。
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