劇場公開日 2022年2月11日

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「☆☆☆★★★ 深夜0:07 ほんの少しだけ人生に於ける振り返りの瞬...」ちょっと思い出しただけ 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0☆☆☆★★★ 深夜0:07 ほんの少しだけ人生に於ける振り返りの瞬...

2024年3月21日
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☆☆☆★★★

深夜0:07
ほんの少しだけ人生に於ける振り返りの瞬間

良い映画だったなあ〜!
もう自分にはハリウッドの大作映画よりも、こんな作品でしみじみと心に染み入って来る作品だけを積極的に観て行きたい…と、つくづく思わさせてくれる作品でした。

松井大吾✖️クリープパイプ✖️池松壮亮
このコラボだと、どうしても『私たちのハァハァ』が思い浮かぶ。
あの時の池松壮亮はゲスト出演って感じではあったけど。作品自体がロードムービーだっただけに、若い女の子達と作品中に絡む事でとても良い味付けとなっていた。

元カノでタクシードライバー役には伊藤沙莉。
元々、『ナイト・オン・ザ・プラネット』が尾崎世界観のNo. 1作品…って事での企画らしいですが。彼女にとってこの役柄は、最初は意外だなあ…と思っていたのですが。そこは流石に伊藤沙莉。観て行くうちにどんどんとタクシードライバーらしく見えて来る。
作品中に啖呵を切る場面等、観ていても「やっぱりこの子は違うなあ〜!」…と、感心する事しきり。

ただ、これはほぼ同じ時期に撮影されていたのかな?…って事で、批判されるまでには至らないとは思うのですが。同じく伊藤沙莉が出演していた『ボクたちはみんな大人になれなかった』と比較してしまうと。どちらも、彼女、、、つまりは伊藤沙莉との出会いと別れ。それを『ボク…』と同じように、、、
現在→過去→出会い→現在のその後…の順に映画は描いているのが、両作品とも全く同じ展開にはなっていました。

それだけに、『ボク…』の主人公は森山未來でしたが。それが池松壮亮に変わっただけ、、、って意見が出て来ても止むなしのところはあるかも知れません。
但し、脚本上でこの作品は。1日の始まりにデジタル時計を画面に表示していて。それが観ている観客に、〝 ある1つの謎かけ 〟として提示している為に、観ていながら「これは何だろう?」…との興味を引き付ける巧みな構成になっていた。

「オリンピックやるとは思わなかったですね〜」

コロナ禍の中でマスクが手離せない時代。
この台詞の情報で、映画の始まりが2021年であるのがそれとなく観客に示されます。

※ 1 《そしてその日が毎年の7月or8月?何れかの26日である事も》
(どうやら今のところ、7月説が多いですね)

映画のほとんどは伊藤沙莉と池松壮亮の2人が中心となるが、この2人の周りに何人もの多彩な登場人物達が集まり(交錯しながら)ストーリーは進んで(遡って)行く。

永瀬正敏は謎の男なのだが。彼の登場には、作品自体は違うものの。ひょっとしてジャームッシュ繋がりでの出演だったのだろうか?
だとしたら待ち望んでいた人は、出来れば工藤夕貴であったのなら嬉しかったのだけれども。
このキャラクターだけは、元ネタでもあるジャームッシュ作品との共通認識が理解出来ないと少し難しいのかも知れないですね。

他にも渋川清彦だったり、高岡早紀であったり(尾崎世界観もね)と。それぞれいい味付けのある登場の仕方でした。
※ 2 そんな中でも、【BAR泊まり木】に集まるのが、、、
マスター 國村隼
常連 池松壮亮
成田凌
元常連 伊藤沙莉
池松の友人 河合優実
彼氏 菅田俊

このアンサンブルが観ていて本当に楽しかった。
一見すると特に有っても無くても変わらない。
人によっては「ここを削ればもっとスンナリするんじゃないのか?」…との意見が出てもおかしくはないですね。そんな意見も、実際には間違いではないと思います。

マスター役の國村隼はどう見ても《普通のおじさん》なんですが、実はジェンダーなのが段々と分かってきます。
河合は普通の女性で、成田凌はオネエ言葉を駆使しているが、これはこの場だから許されるのを承知で使っています。彼は完全なる(いわゆる)《ノンケ》に辺ります。
そして最後の最後に《彼氏》としてほんのちょこっと登場するのが菅田俊。
つまりこの場に集うのが…男と女、それにジェンダーの2人を含めた人種の集まる場になっているんですね。
その上、池松壮亮はある意味では中性的でもあるしね。
私には、この遊びの部分が観ていても面白かったんですよね〜。

そしてもう1人意外な人物が居て、それがニューヨークの屋敷。

「昭和っすね」

「夏来ましたわ」

…にはちょっと笑ってしまった。
作品中での良い調味料となっていた。
夏は続いているみたいだし。考えてみたら後輩の妹ですから、気を使ったでしょうなあ(笑)

嗚呼そうだ!鈴木慶一のドライバー役が昔のハリウッド作品。
分かりやすく例えると『素晴らしき哉、人生』で、ジェームス・スチュアートとドナ・リードがグズグズしているのをベランダから…

「いいから早くキスしろ!」

…と、はやしたてるおじさん(笑)
そんな、昔の作品には。ちょっと粋な台詞をサラッと言っては、記憶に残る演技をする脇役の妙を味わせてくれる人が必ず居たものです。
そんなところも個人的には気に入っている理由の1つになっています。

深夜0:08分
世界は少しずつ進んで行く。
・デジタル時計
・もんじゃ
・朝の体操
・自宅近くの階段
・お地蔵さん
・公園のベンチ
・いつも通る商店街
・常連の集うBAR
・花束
・煙草の煙…etc
全ては1人1人の人生と、時の流れと共に。形をゆっくりと変えて行きながら。

2022年 2月12日 TOHOシネマズ西新井/スクリーン7

※ 1 「オリンピックやるとは思わなかったですね」

街の雰囲気であり、蝉が昼間には常に鳴いているのを感じると既にオリンピックは終わっている感じがするので8月では?とは思うのですが。出演者達を見ていると真夏の様子には見えないのと、屋敷の台詞「夏来ましたわ」から考えると7月のようにも見えなくはない。
ちょっと悩ましい💧

※ 2 この【BAR泊まり木】の最初の場面。
さりげなく聴こえて来るBGM。
エンドクレジットには何故だか記載されてはいなかったのだけれど。この時に流れていたのはファッツ・ウォーラーの歌いながらのピアノ
(音が小さくて曲名は分からなかった)
どんなセンスしてるのよ!嬉し過ぎるわ!

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松井の天井直撃ホームラン