「記憶の扉を開いてくれた傑作」ちょっと思い出しただけ ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
記憶の扉を開いてくれた傑作
心に刺さりすぎた作品。
何気ない会話パートでの長回しがたまらない。
生感というか…セリフひとつひとつとっても、体の内から出てくる言葉に見えてくる。
俳優が演じるキャラクターではなく、実際に今を生きている人間にしか見えない。
このリアリティが本当に良かった。
時間を逆行しながら繰り返される7月26日の中で、見ているうちに自分の記憶の扉が開けられるような感覚を覚えた。
アルバムを1ページずつめくり振り返るような構成はなんとも感慨深く、この感情は他のどんな映画でも得難い物だった。
安易に恋愛映画として捉えるつもりはない。
むしろ、過去の断片の積み重ねで出来ている自分の今。つまり人生そのものと向き合う事になる、そんな作品だ。
何を思うかは人それぞれだし。
不快に思う人もいれば、感慨に浸る人もいるだろう。
時間を編集して逆行も順行もできる映画ならではのマジックで振り返る人生。
辛い失恋も、諦めた夢も、全ては今の自分を構成しているジェンガの一コマなのだろう。
無駄な物は何ひとつなかったんだ。
そう思った。
2025年、7月17日
ジム・ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」を見た翌日、2年半経って2度目の鑑賞。
クライマックスを知ってから見る2週目はまるで印象が変わる。
序盤から涙腺が緩みっぱなしだった。
細かなセリフや小道具の丁寧な伏線が重層的に重なっている。
ラストの葉の言葉遣いが大阪弁になってたりと、とにかく人物描写が丁寧で生々しくて切ない。
本編の構造。
ストーリーでキーになる映画やポスター描写。
それだけじゃなく細部に渡って「ナイト・オブ・ザ・プラネット」のオマージュに溢れてたんだな。
細かなセリフ、構図、足を挟みそうになるシーンまでオマージュだったとは。
更に解像度を上げての鑑賞で、この作品を深く愛せるようになった気がする。
また気になった時に鑑賞しよう。
