劇場公開日 2022年2月11日

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「コロナ前の時代がすでに懐かしい」ちょっと思い出しただけ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0コロナ前の時代がすでに懐かしい

2022年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

コロナ禍の東京から映画が始まる。マスクで人の表情が見えず、人とあまり接触しない毎日を求められる私たちは人の温かみを忘れ始めているかもしれない。この映画の主人公の男女2人は、かつて恋人同士だった。その幸せだった恋人時代を時を巻き戻すように、出会いの時までを逆回転で描いていく。コロナ時代にはもう遠い思い出のようなマスクのいらない時代が懐かしく思える。マスクのいらない、人との距離が近かった時代と、主人公2人が親密だった時代が重なることで、人との親密さの温かさを強く思い出せるように仕掛けているのが上手い。タイトル通り、そんな過去を「ちょっと思い出して」いるわけだが、甘い思い出も苦い思い出もあって僕らの人生が成り立っている。コロナのある時代の「今」をすごくしっかり切り取っている。
主演の伊藤沙莉と池松壮亮の2人の空気感がすごくいい。こういう2人いるよねっていう、説得力というか存在感というか。なぜかこの2人を知ってる気分になる。

杉本穂高