「ノスタルジーが心にも、景色にも溢れる」ちょっと思い出しただけ Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ノスタルジーが心にも、景色にも溢れる
明日への希望は努力を要求してきて、辛い。
思い出す昔は自分を癒してくれる。決して退嬰的な気持ちに浸りたかった訳ではないですが、観ていて心地よくなりました。
◉満ちてくる昔の幸せ
かなり遣る瀬ないけれど、表面は普通の人生を送っていく二人の男女が主人公。過去と今の断片が降る雪のように混じりながら、その二人の暮らしが描かれる。
ストーリーの前後も追いたかったけれど、それだけになってしまうと気がついたので、もう成り行きに任せましたが、話はどんどん温まっていきました。
何故ならば、過去の二人を見ていて羨ましさしか感じない。全〜部が笑みになっていて、幸せを映像化するとこんな風になると言う見本のようでした。他人事だけど、この多幸感。もちろん、切ない現在も静かに横たわっているから、作品は成り立つのですが。
◉日々は優しく過ぎてきた
物憂げな照生は、それでも目覚めるとラジオ体操をして一日に向き合うし、わだかまりを抱えた葉も丈の短いスーツを着て車を転がして、何処へか向かう。
これだなと思いました。今の自分を優しく見つめてくれる「昔」があれば、失恋しようが、人生を変える大怪我しようが、普通レベルならば生きていける。無論、上も目指せるし。
繰り返しになるのですが、今に絶望した訳ではない。
パツパツのスーツの伊藤沙莉さんは、素敵な女性の暴力的な魅力を教えてくれた。見つめる瞳から溢れる情感。
昔の二人でやっていたラジオ体操を、一人になっても続ければ、どうにか生きていけることを池松壮亮さんは教えてくれた。
執拗に現れた誕生日は、辛くても生きて歳を重ねてきたことの表象だったかも知れないです。
少し病んでしまった永瀬正敏さんは、優しさを糧にして、まだ生きていけるんでしょう。
全〜部が笑みになっていて、幸せを映像化するとこんな風になると言う見本のようでした。
これだ! 感じていたのはこれです。
言葉にしていただいてありがとうございます!