劇場公開日 2022年2月11日

  • 予告編を見る

「本当に、ちょっと思い出しただけ」ちょっと思い出しただけ 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0本当に、ちょっと思い出しただけ

2022年3月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

難しい

寝られる

2021年夏、コロナ禍の東京。
オリンピックが開かれる中、タクシー運転手の葉は夜道にタクシーを走らせる。
照明スタッフで元ダンサーの照生は、ダンスの公演が終わった舞台で1人踊っていた。
照生の誕生日のたった1日を振り返る5年間の物語。

珍しく酷評させていただきます。
近年流行りの「戻れないあの頃回想型青春映画」。
花束〜、ボクたちは〜、明け方〜、そして今作。
結ばれなかったあの人との思い出を、エモさと名曲で時代とともに振り返る、アレです。
多少ネタ切れ感があるけれど、上に挙げた4作の中でも1番の絶賛具合だったので楽しみに観に行きました。

まず一言言わせてくれ。
ボクたちは〜とダダかぶりじゃん!
まずヒロインが伊藤ちゃん(因みに篠原篤さんも出演)、そしてメメント構造の振り返り方。
昨年のベストにボクたちは〜を入れた身としてはどうしても比較してしまうし、色々言いたいことも出てきてしまう。
ボクたちは〜を観ていなければ真新しさがあって多少評価が上がったかもしれないが、それにしても…

物語はコロナ禍の閑散とした東京から始まる(これも同じ)。
登場人物は少なく、セリフもほとんどなく、静かに静かに進んでいくプロローグ。
外出自粛が叫ばれる昨今の状況らしい描写と、シネコンでこんな丁寧な映画が流れることに感動した。流石松井監督。
コロナ禍以前の社会になり、活気が戻ってくるはずが。
…あれ、そのままだ。
結局、盛り上がりに欠ける違和感を抱きながらエンディングを迎えた。

登場人物が少ない。
特に目立ったキャストは池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実、國村隼くらい。
尾崎世界観と永瀬正敏も印象は強いけどポジションがよく分からない。
成田凌も確かに出てたんだけど、エンドロールで名前を見つけてから確信が持てるほどの影の薄さ。
渋川清彦?市川実和子?高岡早紀?あ、あの役か。
ニューヨークの屋敷もせっかく話題性があるのに、あれじゃあ誰だか分からんわ(この手のキャスティングは何故か『劇場』の井口理を思い出す)。
あと、顔などをよく見たいシーンに限って暗い。
日めくりカレンダー的なのは、見方が分からなくて戸惑っていたら、そのあとずっと暗がりの中で見えず途中で諦めた。

メメント構造であるものの、ボクたちは〜と違うのは1年のうちのたった1日(照生の誕生日)にスポットを当てている点。
1年のうちの1日、つまり繋ぎとなる364日はこちらが想像しなければならない。
いや、いくらなんでもそれは無謀でしょ。
こちら側が想像することで作品に深みが増すというのは分かる。
ただ、あまりに点と点すぎて私のペンでは線が引ききれなかった。

空っぽとまでは言わないけれど、結局2時間も何を観ていたのだろうという感覚に襲われた。
ロングトレーラーを見たくらいのものしか残らなかった。
バレッタとかももうちょっと良い使い方が出来ていれば。
元ネタのジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』は予習しておいて損はないと思う。
自分はまだ観てないけど。
2つだけ、問答無用で良かったところ上げて締めます。
クリープハイプの主題曲「ナイトオンザプラネット」と伊藤ちゃんのハスキーボイス!

唐揚げ