「【”二度と戻らない、愛しくも仄かに苦き六年間の日々・・。”タクシー運転手の女性と元ダンサーの恋を、彼らが出会った人々の姿と共に逆時系列で描き出した恋物語。チョイ役の俳優さん達の姿や言葉も佳き作品也。】」ちょっと思い出しただけ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”二度と戻らない、愛しくも仄かに苦き六年間の日々・・。”タクシー運転手の女性と元ダンサーの恋を、彼らが出会った人々の姿と共に逆時系列で描き出した恋物語。チョイ役の俳優さん達の姿や言葉も佳き作品也。】
ー 今作は、誰が見ても分かるように、ジム・ジャームッシュ監督の「ナイト・オン・ザ・プラネット」(原題:Night On Earth)に着想を得て製作されている。
冒頭から、元ダンサーで、足の怪我により今は照明係の照生(池松壮亮)が夜中に観ているTVに「ナイト・オン・ザ・プラネット」のロサンゼルスの街で、タクシーを流すコーキー(ウィノナ・ライダー)の姿が映るのである・・。ー
◆感想
・時系列を出会いから遡及しながら、物語は過去の二人を描いていく。きっかけは乗客のトイレのために停車したところで、タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)が、元カレの輝生が夜中に一人でダンスのレッスンを痛めた足を気にしながら行っている姿を偶然見てしまった所から始まる。
- 物語設定の着想が秀逸である。松居監督の過去作「くれなずめ」を思い出す。ー
・輝生の部屋のベッドの上には、「Night On Earth」のポスターが貼ってある。
- 欲しいよ!ー
・毎日、同じルーティンを繰り返す輝生。
起きて、植物に霧吹きで水を与え、猫に餌をやり、アパートの階段を降り、曲がり角で足を止めてお地蔵さんに手を合わせ、公園を突っ切って歩いて行く。
公園には、妻に先立たれた男(永瀬正敏)が、椅子にぼんやり座っている。
男に挨拶をする、輝生。
- この一連のシーンは、ジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」を容易に想起させる。毎日、同じことを繰り返す、パターソンに住むバス運転手パターソン(アダム・ドライヴァー)の姿を・・。
あの素敵な作品では、日本からやって来た、詩が好きなサラリーマンを永瀬正敏が演じている。今作と同じように公園のベンチに腰掛けながら・・。-
・輝生と、葉が付き合っていた頃のシーンで、コーキーを女優に誘うヴィクトリア(ジーナ・ローランズ)の遣り取りを、楽しそうに真似る二人。
”夢は何?””整備工よ!”
ー この後、ヴィクトリアはコーキーに”貴方にピッタリの役があるの。物凄く良い役よ。””分かるけど、あたしはタクシー運転手よ。いずれは整備工に。”・・と言う会話が続くのであるが・・。
ついでに書くと、今作では輝生の脚が、ドアに挟まれそうなシーンがあるが、「ナイト・オン・ザ・プラネット」でもコーキーがヴィクトリアの脚をドアで挟みそうになるシーンがある。”ちょっと、待って。脚がまだよ。”ー
・タクシーに二人で乗っていて、葉が降りようとした時に、輝生が何かを言いかけて止めようとしたときにタクシードライバー(鈴木慶一!)が、二人に掛けた言葉も良かったなあ。
ー ”大事な事は、思った時に言わないと・・。メーター止めておきますから・・。”
粋なドライバーであるよ。-
・随所で出てくる、ケーキの使い方も上手い。物語の流れの区切りになっている。
輝生と、葉が二人で食べた輝生の誕生日ケーキ。
劇団の初日にサプライズで輝生に振舞われたケーキ。
葉の行きつけの飲み屋のマスター(國村隼)に、”彼”(菅田俊!!!)が出来、誕生日ケーキの飾りつけをするシーンも、オモシロイ。
・ラストの輝生と、葉が初めて会った夜、シャッターが下ろされた商店街で、二人で手を繋いで、ジャンプを繰り返すシーンも良い。
彼らの傍で、ギターを爪弾く男(尾崎世界観)の姿。
<二度と戻らない、ある男女の愛しくも、仄かに苦き六年間を彼らを取り巻く多くの人々の姿と共に時間軸を遡って描き出したラブストーリー。
成田凌、渋川清彦、篠原篤、市川実日子、高岡早紀さんなど、俳優さん達が、チョイ役で多数出演している所も、楽しき作品である。>
■今作のフライヤーが、手元に8種類ある。
印象的なシーンが表にプリントされている。少し、嬉しい。
ほんとうに映画を大事に大事に鑑賞なさっているのですね。
「パターソン」も、そして「くれなずめ」もとても心に染みて、
心が温もる映画でしたね。大好きです。
私もいつかNOBUさんのような発見があって広がりのあるレビューを
書きたいです。
> 今作のフライヤーが、手元に8種類ある
さすが。
これ、いい映画でしたね。NOBUさんがあげてくれた「パターソン」も大好きです。詩的センス皆無の俺に詩の素晴らしさを、教えてくれた映画。
「ナイト・オン・ザ・プラネット」でもコーキーがヴィクトリアの脚をドアで挟みそうになるシーンがある。”ちょっと、待って。脚がまだよ。”ー
そうだったんですね。。
「ナイト・オン・ザ・プラネット」観ようかな。
NOBUさん、コメントありがとうございます!こちらこそいつも映画の細かいところまで気づいて感想を綴ってくれていてとっても参考にさせてもらってます!
そんなふうに言われたことなかったのでとっても嬉しかったです、、!観終わってすぐは言葉が全然まとまらなくて深夜にするすると言葉が溢れてきました。ほんと、いい映画でした。
引き続き何卒よろしくお願いします(^^)
NOBUさん、そうだ!パターソン!
NOBUさんのレビューで思わず膝を打つ!(本当に打ちました笑
永瀬正敏さんがベンチに座ってたのもパターソンへのオマージュ。繰り返しの日々、繰り返されるカメラワークも!