劇場公開日 2022年11月11日

  • 予告編を見る

「土を喰らう 旬の膳の映画」土を喰らう十二ヵ月 gomako1933さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5土を喰らう 旬の膳の映画

2022年11月30日
iPhoneアプリから投稿

水上勉の晩年に書かれた生活と旬の料理のエッセイ、を原作にし中江裕司監督と料理家土井善晴氏が脚本にしたフィクション
原作はずっと昔に読んだ記憶があるけれど、歳の離れた恋人で編集者の真知子(松たか子)とやり取りする物語は記憶にありません。
 自然の光の中の撮影が美しく、旬の素材が土から芽吹く存在感が素晴らしい。
 ちょっと暗い家の台所。昔あった土間にタイルの洗い場が懐かしい。自給自足の生活には土を流せる洗い場は必須。

 とにかく旬のものを損うことなく食す膳がこの映画の魅力。
 土に根ざした生活、自分のありのままに生きているツトム(沢田研二)は全てに達観している様に見える。
恋人?という設定の真知子を旬の美味いもの、本当の精進料理でもてなし自分の皿のものまで与える。
それを美味しそうに食べる真知子の姿にご満悦。
時にはマチコ、マチコと呼び手伝わせる。
自分との距離感がパートナー(伴侶)というよりも
愛犬のサンショとかぶって見える。
人恋しさもありマチコと共に生活するも家族ではなく、ただ時を過ごしているように見える。
 ツトム自身が倒れ自分の健康が損なわれてからは
「独りで生まれて独りで死んでいく」と言う、このくだり。
 世捨て人の義母の葬儀を取り仕切り、
やはり人は人と生きていることを感じたはずなのに…
 迷惑をかけたくないという思いもあるだろうけれど
ちょっと最後が独善的に見えた。

「昔の人は旨いもん食ってたんだなあ」と言う火野正平が素直。
旬の料理で日本酒が飲みたくなる。

gomako1933