今年159本目(合計223本目)。
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(※) 内容が混乱しますので、下記で「中国」と書いた場合、便宜上の国扱いをする台湾・中国を除くもの(つまり、中国本土のみ)とします。
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まず、本映画自体、シネマート系列(新宿・心斎橋)がメインで、他ではあまりやっていないようなので、レビュー自体も少なめです。
内容は中国のある事件を実話をベースにしたもので、他の方も書かれていますが、中国社会の闇を描くような内容になっています。ただ、日本と違い、映倫以外にいわゆる「国の検閲」が強力に入りますので、ある程度はどうしても修正されてはいるようです(アクションものには入ると思うのですが、その分もかなりマイルドになっている)。
内容自体は非常にわかりやすいし、最初にこの人犯人かな?と思ってもそれも違うし、かなり練られたところはあります。最後の10分までわからない、そういうところってあります。この点は最後まで作者側もこだわったんだろう、とは思います。
一方でやはり、「諸般の事情」で色々修正が入ったのか、よくわからない描写も多いです。
最初に、土地収用だの損失補償だのという話も出ますので、日本基準でいうと、行政法の話なのかな…と思いますが、まぁ国が違うので(お隣韓国は、ある程度日本と憲法・民法・行政法(学問的な意味)は共通している)、まるで謎の展開になってしまいます。
さらに私人間の話、つまり、給料が未払いだの誰かに騙されただの、債務不履行だのという話も、日本基準で考えるとまるで???な状態であり(日本の民法基準に考えるとまるで不明になるので、固有名詞くらいでみたほうがよさそう)、法律系資格を持っていると大混乱を招きます。
そしてこの映画、要は、中国本土の省のさらに下の県(日本では、国→都道府県→市町村という、「市町村」が実質「県」の扱い)の腐敗を扱ったものであり、最初に「本映画は史実を参考にしています」と日本語で出ますが、結局のところ、本国のトップの意向もあるのか、「地方行政でも適用なことをやっていると本国トップ(要は、北京)でつるし上げにしますよ」ということをプロパガンダする映画なのか、最後には「だれそれが死刑になって没収刑をくらって…」という話が出るように、要は「本国のトップの意向」がかなり入った、換言すれば、「そもそも論で日本で公開されることを想定していない映画なのではないか」と思える点がかなり強いです。
※ なお「徒刑」というのは、日本でいうと「懲役」にあたるようです。その他、最後の結末について語られる字幕は日本語訳がないので、字幕で漢字をある程度推測するしかありませんが(これは日本でこそできる話で、アメリカでやれって言われたらまず無理)、さらに簡体字まで出ますので(しょっちゅう出てくる、「手偏」に「ヨ」をくっつけた漢字は、「清掃」の「掃」の簡体字の模様)、完全に理解するのはまずもって無理じゃないか…と思います。
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(減点0.5) 要は上記につきるのであり、「おそらく、日本で広く観られることを想定していない」「仮にそうだとすると字幕の日本語不足が過ぎる」(簡体字を類推解釈するのも限界がある)という点であって、それ以上でもそれ以下でもないと思います。
これらの点の配慮が少ないというか、まったくないため、「結局何がしたいのかよくわからない」状態になってしまっており、おそらくは「中央トップの意向」(換言すれば、地方行政でも適用なことやってると中央でつるし上げにしますよ、というプロパガンダ)の趣旨の映画ではないか…と思えるのですが、それを「字幕の翻訳不足」の状態で見せても理解が著しく困難で(日本と同じような法律がある国の韓国なら類推も聞いても、政治体制がまるでことなる中国では、それもできない)、結局のところ、「アジア映画祭り」の一環として公開されただけで、「チョイスの際の配慮不足」(字幕がなさすぎて混乱を招くのは明らかなのに選んでいる)という点はあろうかと思いますが、元にない字幕をシネマートが足せるわけもなく、減点幅はこの程度にしました。
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